2017年12月28日(木)
主張
大相撲の暴力問題
改革の歩みを進めるために
大相撲の元横綱日馬富士による傷害事件は日本相撲協会が力士らの処分を終え、28日の臨時理事会、評議員会で節目を迎えます。
元横綱が酒席の場で貴ノ岩関を殴打し、けがを負わせたことがこの事件の中心的な問題です。元横綱には、引退勧告相当の処分が下され、その場で暴力を止めることができなかった横綱白鵬、鶴竜にも減給処分が下りました。
いま貴乃花親方の処分についてその目が向けられていますが、問題の核心は相撲界が一丸となって暴力根絶の改革に向かう態勢をつくれるかどうかにあります。
求められる意識の大転換
改革の方向性は、同協会の危機管理委員会が20日に公表した調査報告書に示されています。
報告書では、今回の事件にかかわった力士たちは「指導・教育のための暴力はやむを得ないとの思いがあった」「口で言っても分からない者には殴ってでも言うことを聞かせるほかない、という気持ちがあった」と指摘しています。
角界は2007年の力士暴行死事件を契機に再発防止に努めてきたはずでした。木刀や竹刀を稽古場からなくし、研修会を開き、暴力根絶を説いてきたものの、十分ではありませんでした。それらを容認する意識の払拭(ふっしょく)が、なぜできなかったのか。根源に迫ることが必要です。
相撲部屋は、力士を育てる役割を担っています。その中には一定のノウハウの蓄積もあるでしょう。しかし、暴力で力士を追い立ててきたやり方とは決別しなくてはなりません。それは木刀や竹刀をなくすだけでは足りません。指導する側の意識の大転換が求められるからです。これまで染みついた誤った考えを廃することと合わせ、科学的で合理的な指導法を学び、身につける必要があります。
それは個々の努力だけでなく協会自身の役割が決定的です。報告書が「協会は…親方に対しても研修を実施し、その意識改革を図るべきである」「親方に指導・教育を進めるべき」と強調している通りです。これは暴力的な指導をなくすにとどまらず、一人ひとりの力士を育てる相撲界の力量をつける取り組みにもなるはずです。
さらに相撲界には「番付が一枚違えば家来同然、一段違えば虫けら同然」という厳格な階級意識があります。今回も横綱という最高位の力士の暴行をだれも止められませんでした。
報告書では、同席していた照ノ富士関が元横綱日馬富士にたいし、「自分たちは思っていることを言えない。壁がある」と答えたとするくだりも出てきます。親方と力士はもちろんのこと、力士同士においても地位の差があっても、互いに人として尊重しあえる関係、しっかりと話し合いができる状況をどうつくっていくのかが、大きな課題となるはずです。
あるべき姿に向かって
今後、危機管理委員会は暴力行為の撲滅を含む行動規範の策定などを求めています。相撲協会は外部の有識者も入れた再発防止策を議論していくとしています。
今度こそ暴力をなくす改革は、待ったなしです。一人ひとりの親方、力士たちが自分たちの足元を見つめ、腹を割って議論し、あるべき姿に向かって主体的に取り組むことが、その最大の保証になることは言うまでもありません。