2017年12月21日(木)
きょうの潮流
こんなに自然を壊していいのか。このまま計画を推し進めていいのか―。静岡大の学生たちが先月、リニア中央新幹線の工事が予定されている現地を訪れました▼大井川の山深い最上流部。南アルプスのど真ん中をトンネルで貫こうとしている場所です。地下水脈を分断し、大井川の水が毎秒2トンも減る。沢に積まれる残土は東京ドームの3杯分で高さ65メートル、幅は数百メートルにもなる。案内人の説明に驚きの声が上がります▼土砂崩れや狭い道を何百台も行き交うダンプの危険。環境を激変させ、住民の生活を脅かす。計画を知れば知るほど、リニアを通す意味が分からないと学生たち。本紙日曜版が報じていました▼自然破壊をはじめ、膨大な残土、水枯れ、住民の立ち退き、乗客の安全。世紀の愚挙といわれ、問題山積のリニア計画が今度は談合疑惑にまみれています。総工費9兆円の巨大事業。その多くを大手ゼネコンが受注し、分け合っていました▼いわば出来レース。談合によって工費がつり上がればツケは国民に回ります。国家的プロジェクトと位置づけ、公的資金を投入した安倍政権の責任も重い。ゼネコンや政治家のための計画には何の道理もありません▼脱線のおそれもあった新幹線のトラブル、後を絶たない視覚障害者のホーム転落死、消えていく地域の足…。悪夢の超特急に費やすカネがあるのなら、乗客や住民を守るためにこそ。各地でストップ・リニアの運動がひろがります。もうけに群がる連中の夢のままで終わらせようと。