2017年12月21日(木)
「築地守る」の約束ほご
都知事、豊洲開場日を発表
来年10月11日 業者らの質問 回答なし
東京都が築地市場(中央区)の移転先としている豊洲新市場(江東区、東京ガス工場跡地)の開場日について都は20日、この日開かれた新市場建設協議会での合意を踏まえ、来年10月11日とすることを決定しました。同日夕、小池百合子知事が都庁で会見し、発表しました。
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都は、同月6日を築地市場の最終営業日、7〜10日を移転期間としています。
小池知事は、土壌汚染問題が解決していない豊洲新市場を「日本の新たな中核市場として育てる」「豊洲ブランドを構築する」などと述べる一方、築地市場の市場機能については一言もふれず、今年6月に「築地は守る」「市場としての機能を確保する」とした約束をほごにする姿勢を示しました。
また、市場業者や市民団体からの公開質問状に一切回答していないにもかかわらず「これまでも丁寧な対応をしてきた」などと述べました。
同日午後、築地市場で開かれた新市場建設協議会では、東京都水産物卸売業者協会の伊藤裕康会長が来年10月11日を開場日とすることを業界団体長の総意として要望し、合意されました。
水産仲卸でつくる東京魚市場卸協同組合の早山豊理事長は、豊洲移転に「不安や不満を持つ方も多い」と強調。都の村松明典中央卸売市場長に対し、「知事に伝えてほしい」として「仲卸は納得したという安易な発言はしないでいただきたい」と訴えました。
解説
過ちを繰り返すのか
「(豊洲新市場の)汚染は解決していない」「食の安全が守れない」「とうてい納得できない」―。東京都が築地市場の業界団体代表との協議会で、豊洲新市場への移転日を来年10月11日とすることで合意したことに、傍聴していた市場業者らが怒りの声をあげました。
小池百合子知事は昨年の都知事選で市場移転を「立ち止まって見直す」と公約。就任直後の8月、舛添要一前知事時代の都政が決めた「2016年11月7日開場」の延期を表明した時、その理由に(1)土壌汚染の懸念(2)巨額で不透明な費用(3)情報公開の不透明さ―を挙げました。
都は土壌と地下水を環境基準以下にする「無害化」を市場移転の前提と約束していました。石原慎太郎元知事時代の都政以来、860億円もかけた土壌汚染対策は失敗し、予定地の地下水からはいまだに環境基準の100〜120倍のベンゼンやシアン、水銀など高濃度の有害物質が検出され続けています。
それにもかかわらず小池知事は6月に築地市場の移転方針を発表し、7月には「無害化」の約束も撤回しました。
地下水位を下げるための「機能強化」工事や、地下空間の床面にコンクリートを敷設するなど追加対策も急いでいます。この追加対策は畑明郎・日本環境学会元会長ら科学者から「実効性がなく、食の安全・安心は確保できない」と厳しく批判されているものです。
市場業者や消費者、都民が「食の安全を守れない」と批判をあげ、合意形成も不十分な中で移転日を合意したことは、小池知事自身が公約を投げ捨て、移転を決めた石原氏以来の歴代知事の過ちを繰り返す愚挙としか言いようがありません。(東京都・川井亮)