2017年12月19日(火)
リニア・ゼネコン談合疑い
大手4社 7割受注
安倍政権肝いり9兆円事業
国の責任で徹底解明を
安倍晋三政権が後押しするJR東海のリニア中央新幹線建設で、大手ゼネコン4社による談合の疑いが東京地検特捜部の捜査で浮上しました。国家的大プロジェクトをめぐる不正入札事件で問われていることは―。(三浦誠)
リニアは東京〜大阪間の約724キロを結びます。地下深くのトンネルを通る場所が多く、総工事費は9兆円を超えます。21世紀に入って最大の大型開発ともされています。
現在までに契約された工事は22件。このうち大林組、鹿島建設、大成建設、清水建設の大手4社が幹事社を務めるJV(共同企業体)が7割を受注しています(表参照)。この4社は「スーパーゼネコン」と呼ばれ、建設業者のなかで別格の扱いをうける大企業です。
「決別宣言」後も
ゼネコン業界は談合の摘発が相次いだため、2005年12月に談合決別宣言を出しました。ただその後も07年に名古屋市発注の地下鉄工事をめぐる談合事件で、大林、鹿島、清水の担当者が有罪判決をうけました。同年には大阪府枚方市の清掃工場建設をめぐり大林の元顧問らが起訴されています。
今年9月には「赤旗」日曜版が談合疑惑をスクープした東京外かく環状道路(外環道)工事で、発注元の東日本・中日本両高速道路会社が「談合などの不正行為の疑いが払しょくできず、公正性を確保できないおそれが生じた」として契約手続きを中止。大手4社の談合が続いていた疑いが出ていました。
ゼネコン談合の多くは、政治家の影がついてまわります。談合に詳しい中堅ゼネコンの元幹部は「リニアでは山梨県に実験線をひいた際に、自民党の金丸信元副総裁(故人)の影響があった」と言います。
財投から3兆円
現在進んでいるリニア工事は、もともとJR東海が自力で建設するとしていました。それを安倍首相が「全線開業を最大8年間前倒し」するとして、財政投融資から3兆円を低利で融資することを決めました。
また自治体の協力を得て事業用地の強制収用もできるなど“優遇”されています。形はJR東海の民間工事ですが、実態は安倍首相肝いりの国家的大型プロジェクトです。
前出のゼネコン元幹部は、「JR東海が単独で事業をするというのに、安倍首相がわざわざ財政投融資を表明した。明らかにおかしい」と指摘します。
大手ゼネコンによる不正入札疑惑の裏で、政治家がどう動いていたのか―。特捜部だけにまかせるのではなく、国の責任で徹底的な解明が必要です。
ゼネコン大手4社が受注したリニア中央新幹線建設工事
【大林JV】品川駅新設(南工区)、東百合丘非常口、名城非常口、名古屋駅中央西工区
【鹿島JV】南アルプストンネル(長野工区)、小野路非常口、中央アルプストンネル(山口)
【大成JV】南アルプストンネル(山梨工区)、南アルプストンネル(静岡工区)、第一中京圏トンネル新設(西尾工区)、導水路トンネル新設
【清水JV】品川駅新設(北工区)、北品川非常口・変電施設(地下部)、伊那山地トンネル(坂島工区)、日吉トンネル(南垣外工区)
(JR東海の資料から作成)