2017年12月17日(日)
“漏えい”えん罪 自衛官 取り調べで迫られた
「行政府の長が激怒」と
統幕長 訪米会談記録
戦争法で共産党が追及
国会で安倍晋三首相らが、「存在しない」と言い切った文書を“漏えい”したとして、1人の幹部自衛官が理不尽な取り調べと配置換えを受けた「自衛官情報漏えいえん罪事件」。“漏えい”したとされるのは、自衛隊の河野克俊統幕長が2014年12月に訪米した際の米軍幹部との「会談記録」です。被害者で、国に損害賠償を求めている現職自衛官、大貫修平3等陸佐(43)が15日、さいたま地裁での裁判後に本紙の取材に応じました。
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「防衛省の自分の机を捜索された時、警務隊の副隊長から『これは官邸マターなんだからな、ちゃんと真面目に受けてくれ』と言われました。その時は脅しかと思ったのですが、その1カ月後の取り調べで『行政府の長が激怒しているんだ』と言われ、安倍首相のことだと思いました」
戦争法(安保法制)案が与党内でも具体化していない時期にもかかわらず、会談記録には「与党の勝利により(戦争法は)来年夏までには終了するものと考えている」と自衛隊トップの河野統幕長が言明したことが記されています。文民統制を揺るがす重大発言です。
15年9月2日、戦争法(安保法制)の国会審議で日本共産党の仁比聡平参院議員がこれを明らかにし、政府を追及しました。
大貫さんは当時、情報本部の担当者として、統合幕僚監部などと情報や各種資料の照会業務をしていました。同年9月末から、陸上自衛隊中央警務隊から捜査されることになります(今年9月に嫌疑不十分で不起訴)。
「取り調べ終了後の昨年、動画で安倍首相と中谷元防衛相(当時)が『存在しない』と答弁するのを初めてみて、『なぜ存在しない文書で捜査できるんだ』と思いました」
「“存在しない”文書の捜査なんてできないことは、警務隊もわかっている。当然、警務隊の発意で始まった捜査ではない。どれくらい上のことかわからないが、政治的な判断が働いたと思う。だから『行政府の長が激怒している』発言につながった。僕は安倍首相がからんだ話だと思います」