2017年12月12日(火)
ノーベル平和賞授賞式 核兵器の終わりの始まりに
禁止条約 すべての国で
ICAN事務局長とサーローさん演説
【オスロ=島田峰隆】ノルウェーの首都オスロで10日、核兵器禁止条約の採択への貢献が評価された国際的なNGOの連合体「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)へのノーベル平和賞授賞式が行われました。ICANのベアトリス・フィン事務局長(35)と、広島で被爆したサーロー節子さん(85)=カナダ在住=がメダルを受け取り、核兵器廃絶を目指すべきだと力強く演説しました。(関連記事)
13歳の時に被爆したサーローさんは「恐ろしいまでに傷ついた人々が、血を流し、やけどを負い、黒焦げになり、膨れ上がっていた」と証言。「広島と長崎で亡くなったすべての人々の存在を感じてほしい。彼らの死を無駄にしてはなりません」「人類と核兵器は共存できません」「核兵器は必要悪ではなく、絶対悪です」と力を込めました。
7月の国連会議で核兵器禁止条約が採択された時には「喜びで感極まった」と語り、「被爆者は72年にわたり、禁止を待ち望んできました。これを核兵器の終わりの始まりにしましょう」と強調。核保有国や核の傘のもとにある「共犯者」の国々の政府は「人類を危機にさらす暴力システムの不可欠の一部分だ」と批判し、すべての国に条約への参加を求めました。
フィン事務局長は、核武装国が増え、テロやサイバー攻撃がある今日では「核兵器が使われる危険は冷戦終結時より大きくなっています」と強調。「迫り来る人類絶滅にわれわれの生存を人質に取られない自由を私たちは取り戻さなければなりません」と語り、抑止力論の克服と核廃絶を訴えました。
核兵器禁止条約について「世界的な危機の時代において前に進む道筋」だと指摘し、各国政府や外交官、市民社会とともに「軍縮に民主主義をもたらし、国際法の新たな形をつくりました」と強調。九つの核保有・疑惑国を批判し、核の傘の下にある国にも「自国と他国を破壊する共犯者になるのですか」と問いかけ、すべての国に条約参加を求めました。
2人の演説中は、10秒以上続く拍手が何度も起こり、涙を拭きながら聞く参加者もみられました。一方で、核兵器禁止条約に反対する米国やロシアなどの核保有大国の大使は授賞式には参加しませんでした。
選考をしたノルウェー・ノーベル委員会のアンデシェン委員長は「国際的な禁止と幅広い国民の関与がすべての核保有国に圧力をかけることを望みます」と語り、ICANの核兵器禁止条約への貢献に敬意を示しました。
授賞式には日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の田中熙巳代表委員と藤森俊希事務局次長、広島と長崎の両市長も出席しました。