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2017年12月10日(日)

主張

巡航ミサイル導入

敵基地攻撃能力の保有やめよ

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 小野寺五典防衛相が、遠く離れた地上の目標や海上の艦船を戦闘機から攻撃できる長射程の巡航ミサイルを導入する方針を正式に表明しました。これを受け、防衛省は2018年度予算案に取得費など21億9000万円を追加要求しました。長距離巡航ミサイルは性能上、日本海上空から北朝鮮内陸部への攻撃が可能です。自衛隊が本格的な敵基地攻撃能力を保有する布石となり、従来の政府見解も憲法も踏みにじる極めて危険な動きです。地域の軍事緊張を激化させ、日本の平和と安全を危うくするものに他なりません。

際限のない大軍拡へ

 防衛省が導入を狙う巡航ミサイルは▽航空自衛隊が配備を進める最新鋭ステルス戦闘機F35に搭載する対地・対艦ミサイル「JSM」(射程500キロ)▽空自の主力戦闘機F15などに搭載する対地ミサイル「JASSM」(射程900キロ)と対地・対艦ミサイル「LRASM」(同)―です。JSMは取得費21億6000万円、JASSMとLRASMは調査費3000万円を追加要求しました。

 小野寺氏は日本の離島防衛などのためであり、敵基地攻撃が目的ではないと述べました。しかし、敵が占領した離島を奪還する作戦でなぜ射程数百キロにも及ぶ巡航ミサイルが必要なのか納得できる説明はありませんでした。

 自民党政務調査会は今年3月、北朝鮮の弾道ミサイル発射への対応について提言を発表しました。提言は「巡航ミサイルをはじめ、わが国としての『敵基地反撃能力』を保有すべく、政府において直ちに検討を開始すること」を求めていました。当時、提言をまとめた検討チームの座長が小野寺氏でした。巡航ミサイルの導入によって体系的な敵基地攻撃能力の保有に道を開く狙いは明らかです。

 政府は敵基地攻撃について日本へのミサイル攻撃を防御するのに「他に手段がない」場合、「法理的」には「可能」という見解(56年、鳩山一郎首相)を示してきました。一方で「平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っていることは憲法の趣旨とするところではない」(59年、伊能繁次郎防衛庁長官)との見解も維持しています。巡航ミサイルなど敵基地攻撃能力の保有が憲法に反することは明白です。

 敵基地攻撃能力の保有が際限のない大軍拡につながることも重大です。敵基地攻撃に必要な兵器には、巡航ミサイルといった精密誘導兵器の他、▽敵の防空レーダーを無力化する電子戦機▽敵の防空網をかいくぐる低空侵入やステルス性能の戦闘機▽目標の位置を正確に把握する偵察衛星や無人偵察機―などが挙げられています。こうした兵器を持とうとすれば、現在、5兆円を超える軍事費はさらに兆単位で増額されかねません。

軍事対軍事ではなく

 敵基地攻撃が非現実的だという専門家の指摘もあります。地下や移動発射台にあるミサイル全ての位置を把握して破壊することは不可能で、残ったミサイルによる核の報復攻撃の危険もあります。

 北朝鮮の核・ミサイル開発は断じて許されません。しかし、その解決には、対話と交渉による外交努力こそ必要です。軍事挑発に軍事力強化で対抗し合う悪循環を加速させる敵基地攻撃能力の保有はきっぱりとやめるべきです。


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