2017年12月7日(木)
主張
障害者の負担増
実態無視の案は撤回しかない
厚生労働省が、通所施設を利用している低所得の障害者向けの食費軽減措置を来年3月末で廃止する方針を提案し、障害者や家族、施設関係者の不安と怒りを広げています。軽減措置がなくなれば、障害者の全額自己負担にもつながる危険があり、施設に通うことを断念する人たちが続出しかねません。利用者負担に転嫁させないように施設側が負担増分をかぶることになれば大幅な減収となり、運営には大きな打撃となります。障害者の置かれている暮らしの実態を無視した負担増案はきっぱり撤回するしかありません。
賃金がほとんど消える
厚労省が廃止することを提案した軽減措置は、「食事提供体制加算」です。同加算は、障害者の日中の生活や就労を支援する施設(共同作業所など)を対象に、利用者向けの食事を調理して給食として提供する場合に人件費分として公費から支出する仕組みです。
これらの施設での給食については、食材費だけを障害者の負担にすることが長年続いてきましたが、利用者に「応益負担」を強いる「障害者自立支援法」の施行(2006年4月)によって、全額自己負担にされてしまいました。しかし、障害者の負担があまりに重くなるため、同法施行後3年間の「激変緩和」措置として食事提供体制加算が設けられ、延長が重ねられてきた経過があります。
通所施設を使う障害者の多くは年金と工賃しか主な収入はありません。障害者団体の実態調査では回答者の98%が年収200万円以下です。軽減措置を打ち切る状況にないことは明らかです。18年度の障害福祉サービスの報酬改定をめぐる厚労省のヒアリングでも「安心して施設を利用できるように、継続して」という声が多数の団体から相次いでいました。これらの声に逆らい、加算の廃止を提案した厚労省の姿勢は重大です。
全額負担となれば、現在月約5000円の食費負担が約1万4000円に跳ね上がります。通所施設の作業で受け取る賃金は平均月約1万5000円といわれており、これがほとんど消えてしまいます。負担に耐えられず多くの人が通所をあきらめる事態を引き起こす危険があります。施設にとっても深刻です。加算廃止で年1100万円減収になる施設の運営団体も出る恐れがあり、人材確保をさらに困難にさせます。給食廃止となると利用者が弁当を持参することも考えられますが、栄養面などで懸念の声が上がっています。通所施設の給食は、障害の特性に応じ手作りで工夫するなど障害者の健康保持、生活能力向上に役割を果たしています。障害者の生活を支え、活動の場を保障している加算を廃止することに道理はありません。
「反省」の表明はどこへ
障害者自立支援法廃止を求めた違憲訴訟で、国は原告団・弁護団と和解し、「基本合意」を結びました(10年1月)。その中で国は、当事者の実態調査や意見を十分踏まえず拙速に制度を施行し、応益負担の導入で障害者、家族らに多大な混乱と生活への悪影響を招き、「障害者の人間としての尊厳を深く傷つけたことに」「心から反省」すると表明したはずです。加算廃止は、政府自身の言明に反します。加算の存続をはじめ、障害福祉の報酬や予算の増額と抜本的拡充こそ必要です。