2017年12月3日(日)
日本大学 非常勤講師に雇い止め通告
撤回求め労組が団交
「無期契約転換逃れだ」
日本最大のマンモス大学、日本大学(本部・東京都千代田区)が、有期契約労働者の無期契約転換から逃れようと非常勤講師に雇い止めを通告しているとして、首都圏大学非常勤講師組合が撤回を求めてたたかっています。なかには、文部科学省から学部新設の認可を受けた計画を不履行にする雇い止め事例もあり、同組合は文科省にも日大への指導を求めています。
(田代正則)
日大は非常勤講師の契約更新を上限5年として雇い止めにする制度をつくりました。非常勤講師組合は11月28日、改正労働契約法の5年無期転換ルールに反するとして撤回を求めて団体交渉を行いました。
改正労契法18条には、有期契約の労働者が5年以上雇用継続すれば、無期契約に転換するルールが導入され、来年4月から適用開始になります。
非常勤講師組合の推計で、日大には4000人の非常勤講師が働いています。
日大から今年10月30日付で、非常勤講師に就業規則などが送付されました。契約期間が5年に達したら契約を更新しないことが規定されていました。
労契法18条2項で定める6カ月の空白(クーリング)期間がある場合は、その空白期間後の契約期間で計算することも書かれており、非常勤講師組合は、「無期転換を避けることを目的として雇い止めをすることを規定しており、雇用安定という労契法の趣旨に反する」と批判しています。
すでに雇い止め通告がはじまっており、2004年から経済学部で教え続けている組合員の男性が11月、雇い止め通告を受けました。
通告書には、表題、責任者、連絡先、日付すら記載されておらず、雇い止め理由も「本学部の事情によるもの」というだけで、具体的な理由は一言もありませんでした。男性は、教職課程担当教員を紹介するためのデータを提出したばかりで、来年度も担当できると思っていました。
組合は、「現状では、無期転換を避けることを目的とした雇い止めと考えざるを得ない」と指摘して撤回を求めています。
昨年新設の学部でも
労組“文科省の認可に反する”
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東京都世田谷区の三軒茶屋キャンパスに2016年4月から新設されたスポーツ科学部と危機管理学部では、英語を教える非常勤講師16人全員を18年3月で雇い止めしようとしています。
非常勤講師組合は、大学の新設学部は最初に卒業生を出すまでの4年間の計画で文科省から認可されていると指摘。認可不履行となる大量雇い止めをやめさせるよう大学に求めるとともに、文科省に指導を要請しています。
雇い止め通告を受けている組合員の男性は、新設学部に採用され、14年12月、新学部設置申請に必要な履歴書などを日大に提出しました。日大が文科省に提出した教員名簿に、男性も「講師」として記載されています。
日大が非常勤講師に示した書類には、「(最初の卒業生が出る)完成年度の平成32年(2020年)3月までは、継続してご担当いただきますよう、お願いいたします」と念が押されていました。
ところが、日大は、学部新設から2年もたたない今月6日から非常勤講師への説明会を順次行い、来年3月で英語非常勤講師16人全員を「雇い止め」すると通告しました。
雇い止め理由は、「カリキュラム改変」「カリキュラムの運用の変更」などと説明されています。来年度以降の英語講座がどうなるか、学生らにも不安が広がっています。
組合は、大学側で4年は講義担当を続けるよう義務付けておきながら、途中で雇い止めするのは明らかな契約違反だと批判しています。
雇い止め撤回を求める非常勤講師組合の松村比奈子委員長は、「学部新設の認可は、加計学園などでも問題になっている。日大の雇い止めを許せば、責任をもって履行できない計画でも認可されることになりかねない」と警鐘を鳴らします。
文科省大学設置室は、本紙の問い合わせに、「学部新設は、完成年度までの計画で認可しており、それを履行していただくことになっている。教育内容をより充実させるなどの合理的理由がなく変更し履行しなければ、指導する」と答えています。
日大からは、本紙の問い合わせに、2日までに回答がありませんでした。