2017年12月3日(日)
主張
相次ぐ米軍機事故
屈辱的な地位協定の見直しを
沖縄県で相次ぐ米軍機の重大事故をめぐり、日本の捜査機関が原因究明の蚊帳の外に置かれ、県をはじめ防衛省沖縄防衛局さえ十分な環境調査ができない異常事態が生まれています。昨年12月に名護市安部の浅瀬にオスプレイが墜落した事故では、米軍は海上保安庁の捜査を認めず、重要な物証である機体を回収し、証拠隠滅を図りました。今年10月、東村高江の牧草地で起きたヘリ炎上事故では、機体ばかりか周辺の土壌を持ち去り、県警の捜査も、県と防衛局による必要な現場調査もできませんでした。こうした屈辱的な実態を放置することは許されません。
不当な日本の警察権侵害
住民が暮らしを営む基地外で米軍機が重大な事故を起こしても、日本の関係機関が、機体を検証することも、環境汚染の調査も十分にできないというのは、極めて理不尽です。10月のヘリ炎上事故では、機体の一部に使われていた放射性物質で土壌が汚染されている可能性がありました。しかし、米軍は、県や防衛局に現場直近での調査を認めたその日に土壌を搬出してしまいました。
こうした米軍の横暴勝手の根底には、日本に駐留する米軍の法的地位を定めた日米地位協定があります。日米地位協定は日本の主権を侵害し、ドイツやイタリアなどと比較しても米軍に治外法権的特権を与える植民地的なものです。
しかし、その日米地位協定でも、基地の外での米軍の事故については、警察権は日本にあることを明確にしています。地位協定は、基地の外では米軍の警察は日本当局との取り決めに従い、日本当局と連絡を取って使用され、その使用も米兵間の「規律及び秩序の維持」に限るとしています(17条10項b)。さらに、必要な捜査の実施、証拠の収集・提出について日本当局と米軍当局との相互援助(同条6項a)の規定もあります。
一方で、地位協定に関する日米間の了解事項を記録した「合意議事録」は、17条10項bに関し、日本当局は米軍財産の捜索、差し押さえ、検証を行う権利を行使しないとし、米軍当局が同意した場合はこの限りでないと定めています。地位協定の実施に関する刑事特別法にも、捜索、差し押さえ、検証は米側の同意を得て行うという規定があります。
これは、日本の警察権行使を制約する不当な規定です。しかし、ヘリ炎上事故やオスプレイ墜落事故で、米軍が基地外での日本の警察権行使を拒否し、証拠を隠滅する行為は、これら一連の規定にも反する許し難いものです。
基地外の米軍機事故の対応について日米両政府が定めたガイドラインも重大です。事故現場周辺に設ける制限区域の立ち入りには米軍の同意が必要です。米軍は機体の残骸、部品、残(ざん)滓(し)物などを管理・保持すると定めています。
改定は独立国として当然
沖縄県は9月、政府に提出した「日米地位協定の見直しに関する要請」で、米軍財産が基地の外にある場合、日本当局が捜索、差し押さえ、検証を行う権利を行使することや事故現場の必要な統制は日本当局の主導下に行われることを明記するよう求めています。独立国として当然の要求であり、沖縄だけにとどまらない全国的に切実な課題です。今こそ地位協定の抜本的な見直しが必要です。