2017年11月30日(木)
主張
関西電力大飯原発
こんな再稼働は許されない
関西電力が大飯原発3、4号機(福井県おおい町)を再稼働させる動きを強めています。同県の西川一誠知事が再稼働に同意したことを受けたもので、来年1月以降、順次運転させるとしています。関電はすでに高浜原発3、4号機(同県高浜町)を再稼働させています。東京電力福島第1原発事故は発生から6年8カ月たっても収束のめどはなく、原因も実態も明らかになっていないのに次々と再稼働に踏みだすことは異常です。国民の不安の声にこたえず、再稼働を推進する安倍晋三政権の姿勢はきわめて無責任です。
多発事故対策を想定せず
大飯原発3、4号機をめぐっては、福井地裁が2014年5月、住民が起こした訴訟で「いったん発生した事故は時の経過に従って拡大していく」原発の本質的な危険を認め、原発は人格権を侵害すると運転の差し止めを命じています。同訴訟では、名古屋高裁金沢支部の控訴審で、元原子力規制委員会委員長代理の島崎邦彦東大名誉教授が、大飯原発の耐震性で想定すべき最大の揺れ(基準地震動)が過小評価されていると証言しています。この訴訟はまだ係争中です。
安倍政権と関電は福井県とおおい町の「立地自治体の同意」があれば再稼働できるとしていますが、事故が起これば広範な地域に重大な被害を及ぼす原発の再稼働は地元自治体の「同意」だけで許されるものではありません。避難計画の作成が求められる大飯原発の半径30キロ圏内だけでも15万9000人が暮らし、滋賀県と京都府の一部も同圏内に含まれます。両府県知事は「再稼働を容認できる環境にない」など不満を表明しています。これらの声をかえりみることなく再稼働をすすめることはあまりにも乱暴です。
深刻なのは、大飯原発のある福井県の若狭湾沿いには、廃炉予定のものも含めると15基の原発が集中立地していることです。世界有数の「過密地帯」といえます。今年5〜6月に稼働を強行した高浜原発3、4号機は、大飯原発から直線距離で約14キロメートルしかはなれていません。政府の原子力規制委員会は運転40年超の老朽化した高浜1、2号機、美浜3号機(美浜町)も新規制基準のもとで「合格」させています。原発は1基の事故でも大きな被害を起こしますが、地震や津波によって複数の原発が同時にあるいは連続的に事故になれば、その被害の甚大さは計り知れません。
こうした立地が近い原発が同時に事故を起こすことを想定した避難計画などありません。原発の「多発事故」は規制委の審査の対象外です。規制委は「重大事故対策はそれぞれのところで閉じられるようになっている」と正当化しますが、それこそ根拠のない「安全神話」です。
国民の安全守るために
関電は、県内にある原発の使用済み核燃料を一時保管する中間貯蔵施設について「来年中に計画地点を示す」としています。どこにつくるか決まっておらず処分のめどはありません。
安倍首相が述べていた“世界最高水準の安全基準で安全を確認された原発は再稼働させる”という方針は破綻しています。国民の安全を守るために原発の再稼働方針を撤回させ、「原発ゼロ」へと向かう政治の実現が求められます。