2017年11月28日(火)
きょうの潮流
仮面ライダーなどで知られる宮城県出身の石ノ森章太郎の漫画の描かれた電車が時おり目を引くJR仙石線。東日本大震災から復興し、仙台と石巻の間の通勤、通学に欠かせない都市近郊の鉄道です▼仙台―西塩釜間が開通したのが、1925年です。初めて電車に乗ったおとなたちが「箱が動く」と驚き、背負われた子どもが申し合わせたように泣いたそうです。資金調達に苦労しながら、3年後に全線が開通しました▼この鉄道の歴史を、元共産党東北ブロック事務所長の佐藤芳男さんが『仙石線物語』として出版しました。党市議団の「塩釜時事新報」に連載中のものです。読みたさに「赤旗」の購読を継続している人もいます▼意外にも、鉄道設立の動機は、経営者がかかわった鉱山(細倉鉱山)の余剰電力にありました。第1次世界大戦が始まると、亜鉛の自前精錬を迫られ、水力電力で電気を確保。しかし、戦争が終わると減産を強いられ、電気が余りました。対策の一つとして宮城電気鉄道を創立しました▼十五年戦争のなかで、沿線には造兵廠(しょう)、軍需工場など大規模な軍施設が張りつくように造られ、終戦前年に国に買収されます。住民の足の交通機関から戦争の手段としての鉄道に変わりました▼国内で初めての地下駅の仙台駅が、空襲の避難所として数千人の命を救ったエピソードも。「時代背景を織り込むと、戦争と向き合うことが多くなった」と著者。避難先となったり、車体の色を気にしたりする時代の到来だけはゴメンです。