2017年11月27日(月)
日米共同演習「ヤマサクラ」
進む統合・多国籍化
日本を組み込み戦争法具体化狙う
29日から仙台駐屯地(仙台市)で始まる米陸軍と陸上自衛隊の日米共同方面隊指揮所演習「ヤマサクラ(YS)73」では、陸自が自治体関係者や、国の出先機関などの関係行政機関を対象に安保法制(戦争法)に基づいて軍事作戦に動員するための「研修」を計画しています。背景には、米軍がインド・アジア太平洋地域で進める有事への即応体制づくりとアジア諸国との関係強化・軍事的影響力拡大があります。(佐藤つよし)
YS演習の中心に位置するのが、米陸軍第1軍団司令部(ワシントン州)です。イラク戦争、アフガニスタン戦争に多国籍軍団司令部などとして派遣されてきた同軍団は、2011年12月の米国の「イラク撤退完了宣言」以降のアジア重視政策で、アジア専任の陸軍軍団司令部の役割を担っています。第1軍団司令部は13年11〜12月に東千歳駐屯地(北海道千歳市)で実施したYS65以降、毎年同演習に参加しています。
アジアへの関与
YS73直前の今月6〜17日にも、韓国で同国軍とともに「ウオーファイター演習18―2」を実施。第1軍団司令官のゲーリー・ヴォレスキー中将は「演習は、第1軍団の展開、戦闘、勝利の能力を準備・維持するために重要だ」(米陸軍ホームページニュース、22日付)と強調しました。
14年以降は第1軍団指揮下の旅団戦闘団(2000〜3000人規模)が、ヘリや車両などの資材を貨物船で運びながら日本や韓国、オーストラリア、フィリピン、タイ、インドネシア、マレーシアなどの各国軍と連続的に行う演習「パシフィック・パスウエイズ」を実施し、急速にアジア地域への関与を強めています。
日米豪が一体に
YS演習は米国のアジア重視戦略のもとで大きく変化しています。陸上自衛隊と陸軍の図上演習として1982年に始まりましたが、最近では日米以外の同盟国も参加する多国籍演習化、米陸軍の司令部が陸海空・海兵隊のすべての部隊を指揮する統合演習化が進んでいます。
11年12月のYS61からはオーストラリア陸軍がオブザーバー参加。太平洋地域の米陸軍部隊を統括し、YSで演習のシナリオを管理し成果を判定する統裁官となる米太平洋陸軍司令官の副司令官には13年1月から豪陸軍少将が就任し演習にも参加するなど、日米豪一体の多国籍演習となっています。
陸軍以外の部隊の参加も広がっています。12年11〜12月のYS63からは第5空軍司令部(東京・横田基地)や沖縄に11年12月に発足したばかりの第3海兵遠征旅団司令部が参加。昨年12月に健軍駐屯地(熊本市)などで実施したYS71は、日本版海兵隊として陸自が発足を狙う「水陸機動団」の「共同開発者」として、横須賀基地(神奈川県)の第7艦隊や、佐世保基地(長崎県)の米海軍揚陸部隊「第76任務部隊」、沖縄の第3海兵遠征軍の各司令官も参加し、開始式に並びました。
YS演習は第1軍団司令部を中心にした統合任務部隊の軍事作戦を訓練し、そこに日本を組み込む戦争法の具体化・集団的自衛権行使のための演習となっています。
こうした演習を自治体関係者などに「研修」の名で学ばせる。この露骨な国民動員の戦争準備に厳しい目を向ける必要があります。
米軍の統合任務部隊 米軍の陸海空・海兵隊のすべての軍種を1人の司令官が指揮する作戦体制。統合任務部隊司令部(JTF)の下には、地上、海上、航空のそれぞれの作戦ごとにすべての軍種を指揮する各構成司令部が置かれ、その指揮下で実動部隊が作戦を実施します。
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