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2017年11月26日(日)

主張

介護報酬改定論議

現場の危機を加速させるな

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 2018年度からの介護報酬を改定する議論が進む中、介護の現場から、社会保障財源を確保し介護報酬の引き上げを求める切実な声が広がっています。自民党を中心とした歴代政権による報酬のマイナス改定が繰り返された下で、多くの介護事業者は経営困難を強いられ、利用者が必要な介護サービスを使えない事態が相次いでいます。しかも政府は介護報酬の削減を通じてサービスに利用制限をかける動きを強めています。現場の危機的状況に歯止めをかけ、安心できる介護の仕組みを実現するために介護報酬の引き上げ、仕組みの改善が求められます。

180万人の署名の重み

 「介護報酬改定にむけて、社会保障財源の確保を強くお願いしたい」。全国老人保健施設協会など11団体が今月中旬、「介護の現場を守るための署名」約180万人分を政府に提出し、介護報酬のプラス改定を強く求めました。介護関連の署名を初めて集めたという日本看護協会をはじめ、これほど幅広い団体が一致結束して署名に取り組んだのはかつてないといいます。寄せられた署名数も過去最多です。近年の介護報酬引き下げによってもたらされている苦難をなんとしても打開したいという痛切な思いを反映したものです。

 介護報酬はほぼ3年に1度改定されます。今回は2年に1度の医療の診療報酬改定と重なる年のため、財務省は診療・介護の報酬を一体的に削減する機会にすることを狙っています。

 前回15年度の介護報酬改定では安倍晋三政権が過去最大級のマイナス改定を強行した結果、多くの介護事業所の経営が苦境に追い込まれました。職員を確保できず特別養護老人ホームが新たに開所できない事態などが大問題になりました。厚労省が先月公表した実態調査では介護施設や事業者の大半が利益率を低下させ経営悪化に陥っていることが明らかになっています。同省は15年度の介護報酬改定の影響と認めています。マイナス改定に全く道理はありません。

 介護報酬削減は一人ひとりが使う介護サービスの量と質の縮減につながるため、利用者・家族に大きな負担と困難を強いるものになっています。これまでも要支援の人の「保険外し」などが行われ、「負担あって介護なし」と批判されてきましたが、18年度改定では、深刻な利用制限が厚労省の審議会で検討されています。

 その典型が、訪問介護で調理や掃除をする「生活援助」の利用回数制限です。厚労省が基準を設け、それを超える利用は、市区町村に設けられた会議で検証し、「是正」を求めるというものです。一律の利用制限につながるやり方です。「自立重視」の名で介護保険からの“卒業”も強化しようとしています。国民に長年保険料を負担させておいて、使いたい時にサービスを使えない―こんな「国家的詐欺」は認められません。

削減路線からの転換こそ

 介護保険を利用する人も介護を担う人たちも、ともに安心できる仕組みづくりが急がれます。そのためにも介護報酬の引き上げは不可欠です。あわせて利用者負担を軽減する措置も必要です。

 安倍政権による介護現場の実態を無視した乱暴な給付減と負担増を許さず、拡充に転じる世論と運動を広げることが重要です。


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