2017年11月25日(土)
主張
東海第2原発申請
延長ではなく廃炉こそが必要
日本原子力発電(原電)が、来年11月に40年の運転期限を迎える老朽原発の東海第2原発(茨城県東海村)の最長20年の運転期間延長を原子力規制委員会に申請しました。同原発の半径30キロ圏内には国内の原発として最多の約96万人が住んでいますが、事故があった場合の避難計画はまとまっていません。かりに規制委が同原発の延長を認可すれば、全国で4基の老朽原発が認められることになります。「原則40年」の運転期間さえなし崩しにふみにじり、再稼働を推進することは大問題です。東海第2原発は廃炉こそ必要です。
30キロ圏内に約96万人
原発の運転期間について、原子炉等規制法で原則40年としたのは2011年3月の東京電力福島第1原発の深刻な事故を受けたものです。もともと原発自体が未完成の技術であり、ひとたび地震や津波に襲われるなど事故が起これば重大事態を招くことは、発生から6年8カ月以上たっても収束の見通しもたたない福島原発事故の状況からも明らかです。
その上、40年も運転を続けていれば機器や配管の劣化が起きるだけでなく、放射線にさらされる原子炉本体や壁などがもろくなることは、さけられません。最長20年への延長は規制委が認めた場合、あくまで「例外」としていたはずです。
それにもかかわらず、電力会社は老朽原発の再稼働を狙って運転申請をおこない、規制委は関西電力の高浜原発1、2号機(福井県)、美浜原発3号機(同県)の延長を次々と認めてきました。「例外」をまるで「原則」にするかのようなやり方は許されません。
東海第2原発は福島第1原発と同じ沸騰水型原子炉(BWR)です。同型炉の運転延長申請は初めてです。
沸騰水型炉は原子炉を覆う格納容器が極めて小さく、炉心溶融すると、たちまち容器内は高温高圧となり、容器の破損の恐れがあります。規制委は、格納容器の圧力逃し装置(ベント)の装着を義務付けるなどとしていますが、安全の保証にはなりません。
しかも東海第2原発そのものが、東日本大震災で緊急停止し、津波によって非常用電源3台のうち1台は停止、残り2台で冷却を継続して炉心溶融(メルトダウン)を免れた経緯があります。このことからも、現地では廃炉を求める声が上がっています。
原電が東海第2原発の運転延長を狙うのは、原電にとって同原発しか動かせるめどの立つ原発がなくなり経営困難に陥るからです。こうした住民の安全よりも利益優先の姿勢はやめるべきです。
県民世論は「反対」多数
東海第2原発の半径30キロ圏内の14市町村で避難計画ができている自治体はありません。人口約27万人の県庁所在地・水戸市をはじめ、100万人近くがいる地域で、実効性のある避難計画の作成などきわめて困難です。
地元紙・茨城新聞の世論調査(10月20日)でも再稼働「反対」63%で、「賛成」21%を大きく上回っています。県内市町村議会の6割が「運転延長反対」や「再稼働中止」の意見書を可決しています。世論に逆らい、老朽炉をはじめ原発再稼働をすすめる安倍晋三政権の暴走にストップをかけることが急務です。