2017年11月24日(金)
ドイツ平和運動 政治へ働きかけ
核兵器禁止条約参加めざす
米国の「核の傘」の下にあるドイツで、政府に核兵器禁止条約に参加させようと、国内の平和運動勢力がデモや署名、ロビー活動などを続けています。決裂はしたものの、メルケル首相の主導する連立交渉では、平和運動の働き掛けを受けて、国内の核兵器撤去で合意するまでこぎつけました。(片岡正明)
こうした運動は、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)に参加するドイツ国内の組織や、核戦争防止国際医師会議(IPPNW)のドイツ支部、ドイツ平和協力ネットワークなどが中心となっています。
ドイツではこれまでも、毎年の「復活祭平和行動」など、地道な平和活動が積み上げられてきました。7月の核兵器禁止条約の採択を受けて、平和団体は9月の総選挙へ向け、西部ビュッヘルに配備されている米国の核弾頭20発の撤去、同条約への参加を各党に訴えました。
署名4万人超
同時期、二大政党の一つ社会民主党(SPD)のシュルツ党首は8月の選挙集会で、国内の核兵器撤去を公約に掲げました。同氏は「トランプ米大統領は核戦力増強を求めているが、われわれは反対する」「核軍縮が緊急に必要だ」と訴えました。
総選挙後、10月18日に始まった連立交渉では、交渉に参加するメルケル首相の保守与党、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と自由民主党(FDP)、90年連合・緑の党に働き掛けました。国内からの核兵器撤去などを要求する署名「核軍拡でなく、核軍縮を」の署名4万3408人分を緑の党の代表に手渡しました。
こうした働き掛けを受けて、連立交渉では、国防・外交政策の合意草案に「国内からのすべての核兵器の撤去」「核兵器のない世界に関与し、核軍縮への新たな外交的な動きを始める」ことが盛り込まれました。3党がこの点で基本的に一致したことが判明しています。
人間の鎖結ぶ
連立交渉大詰めで、合意か決裂かが問われた今月18日には、30都市以上で「核兵器、戦争にノーを」をスローガンにデモ、平和行動を繰り広げました。ベルリンでは、米国大使館から北朝鮮大使館までの1キロほどの間を人間の鎖で結び、米国と北朝鮮の核戦争の危険性をアピールしました。
独紙ミッテッルバイエリッシェ(電子版)はドイツ国民の70%が核兵器禁止条約への参加を支持しているとの世論調査結果も引きながら、核兵器に反対してきた緑の党に加え、自民党にも核軍縮を進めようという伝統があると指摘。野党となる社会民主党(SPD)や左翼党も核兵器撤去や禁止条約参加に賛成であり、今がドイツにとって歴史的な核兵器政策の転換点になるチャンスだと強調しました。
連立交渉が決裂し、政治的に不安定な状況が続きますが、平和団体は地道な世論づくりの運動をつづけながら、今後も政治に強く働きかけていく構えです。