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2017年11月22日(水)

主張

来年度税制「改正」

失政のツケ増税に転嫁するな

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 年末に向け、来年度(2018年度)の税制「改正」の検討が始まります。政府の税制調査会は20日これまでの議論の中間とりまとめを行い、自民党と公明党の税制調査会は今週、それぞれ総会を開いて議論を本格化させます。検討に上っているのは所得税の給与所得控除や基礎控除、年金控除の見直し、たばこ税の増税、「森林環境税」や「観光促進税」(出国税)の創設などです。大企業や大資産家への応分の負担を考慮すべきで、国民の負担増につながるものは国民の声を踏まえた慎重な検討が必要です。財政破綻のツケを国民に押し付けるのは許されません。

消費税増税強行に先立ち

 見過ごせないのは安倍晋三政権の5年近い経済政策「アベノミクス」の失政で経済が停滞、税収も伸び悩み、再来年の19年10月からは消費税の8%から10%への引き上げ強行が準備されていることもあり、それに先立つ18年度中に所得税の控除見直しやたばこ税の増税、新税の創設など考えられる限りの税制「改正」に着手しようという意向があることです。自民党税制調査会の宮沢洋一会長は、18年度だけでなく、19年度、20年度も視野に入れて所得税などの「改正」を進めたいとインタビューで答えています。

 安倍首相が政権に復帰してから進めてきた「アベノミクス」によっても経済の立て直しは進まず、14年4月からの消費税の増税もあって暮らしも経済も破綻しており、税収は伸び悩み、財政はいよいよ悪化しています。安倍政権は20年度までには国の財政のうち国債の返還などに充てる費用を除く経常支出を借金に頼らず税収で賄うようにする「プライマリーバランス黒字化」を目標に掲げていましたが、今では借金が増えすぎ、先週の安倍首相の所信表明演説などで口にもできなくなっています。

 政府・与党の税制調査会が再来年の消費税増税を待ちきれず、一斉に増税や新税の検討を始めようとしているのも、財政赤字の深刻化を示すものです。10月の総選挙の結果、自民党と公明党の安倍政権の与党で300議席を超え、参院と並んで衆院でも3分の2の議席を確保したことも背景にあります。増税や新税を検討する一方、法人税については財界の強い要求で、さらに減税すべきだとしているのも政権のおごりの表れです。

 政府・与党は給与や年金の一部を課税所得から差し引く給与所得控除や年金控除の見直しと一律38万円となっている基礎控除の引き上げを「高所得者」への課税強化のように言いますが、今後の線引き次第では中低所得者にも増税になります。年金者はもちろん、低所得者への控除の見直しは生計費非課税の原則に反します。

応能原則踏まえた改革を

 たばこ税の増税や「出国税」など新税の創設も、経済失政のツケを押し付ける、取りやすいところから取るやり方では問題です。来年度3%以上賃上げした企業に法人税を軽減する「賃上げ促進減税」の検討も浮上していますが、中小企業はともかく大企業は減税しなくても、巨額の利益や内部留保で賃上げが可能です。

 税金はもともと、負担能力に応じて負担してもらう応能負担が原則です。失政の責任を国民に押し付け、国民に負担を転嫁する安易な増税は、まさに本末転倒です。


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