2017年11月16日(木)
主張
安倍政権貿易交渉
TPP前提では危険拡大する
アメリカ自身が推進しながらトランプ政権が発足した途端脱退した環太平洋連携協定(TPP)についての11カ国の会合が開かれ、閣僚会合ではアメリカ抜きの発足を大筋合意しました。詰めは残っており、予定された首脳会合は開かれませんでしたが、関税撤廃などの原則は変えず、一部の項目をアメリカの参加まで留保するというものです。日本などは11カ国の合意をアメリカ復帰のきっかけにしたいとしていますが、トランプ政権はあくまで自国の利益最優先で2国間交渉を目指します。安倍晋三政権がTPPに固執する限り日本の困難は増すばかりです。
関税撤廃など原則変えず
アメリカ、日本などが推進したTPPはもともと、原則として関税を撤廃、関税以外の貿易や投資の障壁も大幅緩和し、競争力の強い国や国境を越えて活動する多国籍企業を後押しする仕組みです。焦点の一つの農業で見ると、穀物や畜産など同じ農産物でも国ごとに条件が違うため、同じように関税を撤廃すれば、農地が広大で生産費も安い「大国」に有利になります。多国籍企業が進出先の国に損害賠償を求め訴えることができる投資家対国家紛争解決(ISDS)条項まで盛り込まれました。
TPPが各国の主権を踏みにじり、暮らしや経済に大きな影響を及ぼすため、日本を含め各国で反対運動が強まりました。トランプ政権が脱退したのも、多国間の協定でなく2国間の交渉で自国の利益を拡大したいという独善的な思惑に加え、国内の労働者などの声を無視できなかったためです。
ところが日本の安倍政権はアメリカ言いなりでTPPの合意を急いだあげく、トランプ政権が脱退した後も復帰を働き掛ける異常な態度をとり続け、アメリカを除く11カ国の交渉でも、11カ国が合意すればアメリカが復帰するとして、一部の国の慎重意見を押し切ってまとめようとするなど強引な姿勢を浮き彫りにしました。
11カ国の閣僚会合の合意(「包括的並びに先進的なTPP」=CPTPPと呼ばれる)は、TPPの関税撤廃などの原則は変えず、アメリカが主張していた医薬品の開発データ保護やISDSなど20項目はアメリカが参加するまで「凍結」する中身となっています。11カ国の中にはコメや小麦、牛肉・豚肉などの大生産国であるオーストラリアやニュージーランド、カナダなどが含まれており、日本への影響は避けられません。カナダが求めた文化産業の著作物保護など4項目は新協定の発効までの継続協議となっていますが、合意の見通しは立っていません。
新しい協定の批准阻止を
トランプ政権はTPPを離脱しても、日本などとの2国間交渉で自動車や農産物などの貿易や投資の拡大を要求すると公言しています。日本がTPPに固執し、「日米FTA(自由貿易協定)」など2国間交渉に応じアメリカに譲歩することになれば、日本経済への打撃はさらに大きくなります。
安倍政権は国民の反対を押し切って、トランプ政権の脱退で発効の見通しもないTPP協定を批准しましたが、11カ国の新協定が発効するためには新たな署名・批准が必要です。TPPは断念、新しい協定の批准もやめて、経済主権に立った公正・平等な貿易ルールを確立することが重要です。