2017年11月14日(火)
きょうの潮流
言論や報道の自由を守る活動に取り組む国際NGO「国境なき記者団」によると、ことしに入って殺害された記者は48人。紛争に巻き込まれる例がある一方、不正や腐敗など“社会の闇”を追及するうちに何者かに殺害された例も少なくありません▼地中海の島国マルタで先月爆殺されたダフネ・カルアナガリチアさんもその一人です。車で自宅を出たところ、車内に仕掛けられた爆弾が爆発。脅迫を受けていたと警察に訴えていたばかりでした▼タックスヘイブン(租税回避地)の実態を暴露した「パナマ文書」に基づき政府の腐敗を追及してきた調査報道記者でした。地元紙や自らのブログで記事を連打。交流のあったある記者は米紙で「決して引き下がらない記者」だったと死を惜しみました▼爆殺から間もなく1カ月。恐怖で言論封殺を狙う行為に糾弾の声がやみません。南ドイツ新聞や仏紙ルモンドなど欧米メディア8社は連名書簡で欧州連合(EU)に対し徹底調査を要求しました。「汚職調査を葬るための殺人。許すわけにはいかない」▼「パナマ文書」や先日の「パラダイス文書」は富裕層の税逃れを明るみに出し、対策の必要性を世界に提起しました。権力を監視し、問題を追及する記者の活動は社会の健全な発展に不可欠です▼「恐れず、真実を尊重しながら、人々の目、耳、口となる使命を続けてほしい。私たちには記者のみなさんが必要です」。カルアナガリチアさんの葬儀で、大司教が述べた言葉が真摯(しんし)な記者たちを励ましています。