2017年11月6日(月)
主張
製造大手の不正
違反横行させた体質問われる
神戸製鋼所の製品検査データの改ざん、日産自動車やスバルでの無資格者による完成車の検査―。製造業大手のルール無視の不正行為が相次いで発覚し、「日本のものづくりはどうなっているのか」と国内外で不信を広げています。不正は長期にわたって行われていたことも明らかになる中で、各企業の体質が厳しく問われる事態です。徹底した解明が必要です。
組織ぐるみの根深さ
鉄鋼業界で国内第3位の神戸製鋼所(神鋼)が製品の品質検査データを改ざんし、隠(いん)蔽(ぺい)する不正を行っていたのは、アルミや銅、鉄鋼などの「素材」に関わるものです。取引先は、航空機、自動車、鉄道、建設機械、原発などの民間企業500社以上にのぼり、影響の大きさは深刻です。取引は国外にも広がり、米司法省が顧客に販売した製品の書類の提出を神鋼に要求、欧州航空安全局も域内を飛ぶ航空会社に神鋼製品の交換を促す状況になっています。「不適合製品」の安全性の確認についても、供給網の複雑化などの影響により調査完了のめどはたちません。
銅管を製造する神鋼の子会社による国家規格JIS(日本工業規格)基準違反も判明し、認証を取り消されました。同社は過去にもJISを取り消されたことがあります。品質検査データの改ざん、隠蔽は数十年にわたっていたともみられ、組織ぐるみの根深さを浮き彫りにしています。
日産とスバルでは、新車の完成検査を無資格の従業員が日常的に行っていたことが発覚しました。日産とスバルでは形態の違いはありますが、完成検査はブレーキやライトの性能、排ガスの濃度などを、計測機械を使って調べ、国の「保安基準」に合っているかをチェックするものです。車の安全に関わる最終工程の検査で「手抜き」がされていたことは、安全にたいする企業の認識自体が疑われます。同時に、検査員の資格はメーカー自身が与える仕組みになっており、大事な検査をメーカーに任せきりにしてきた国の責任も重いものがあります。
国内でのリコール(回収・無償修理)の対象車は、日産約120万台、スバル25万台以上に上っています。消費者の信頼を大きく裏切ったことは極めて重大です。
日産幹部は無資格者の検査の常態化について「防止のため完成検査員を増やす」とのべ、必要人員が生産に追いついていなかったことを事実上認めています。
最近の大企業の悪質な不正行為の背景について、製造現場ですすめられるリストラ・合理化、非正規社員化など労働者を大切にしない姿勢を指摘する声も相次いでいます。「利益至上主義」が現場を疲弊させ、安全や品質を犠牲にし、ものづくりの基盤を掘り崩すような事態は見過ごせません。全容の公表とともに、徹底した原因の究明が求められます。
社会的責任の自覚欠く
相次ぐ大企業の不正・不祥事は、企業の社会的責任への自覚を欠いたものです。自民党を中心にした歴代政権が長年にわたって大企業を優遇する政治を続けてきたことが、大企業を“甘やかし”、モラルの低下や劣化を招いてこなかったのか―。今回の一連の問題は、各企業の問題にとどまらず、日本の政治・経済・産業構造のあり方にも警鐘を鳴らしています。