2017年11月5日(日)
主張
津波への備え
教訓踏まえ命守る対策を強め
きょうは国連が制定した「世界津波の日」です。津波がもたらす危険や被害について世界各国・国際機関などの人たちの意識を向上・啓発するために2015年12月の国連総会で採択されたもので、今年で2年目となります。6年8カ月前の東日本大震災での巨大津波による甚大な犠牲と被害を経験し、南海トラフの巨大地震の発生が近い将来想定される日本にとって、津波から国民の生命と暮らし、財産を守ることは極めて切実な課題です。過去の教訓を生かし、あらゆる事態を想定した津波対策を強化・推進することは日本の政治の大きな役割のひとつです。
甚大な被害を引き起こす
海からの大きな波が沿岸のまちを次々とのみ込んで破壊していく―。東日本大震災で発生した津波をとらえた数々の映像や九死に一生を得た人たちの体験談は、津波の持つ恐ろしい力とともに、それから身を守るために日常的な備えがいかに大切であるかを、説得力をもって私たちに訴えてきます。
津波は、海底下で大きな地震が発生すると海底面が上下に変化、それに伴い海水が動かされ周囲に広がる現象です。海底から海面まで海水全体が動く津波はエネルギーも巨大で、高い波の危険はもちろん、高さ20センチ程度でも人は速い流れに巻き込まれてしまいます。
日本では地震、台風、火山などで多くの被害が繰り返され、9月1日の「防災の日」を中心に、災害への備えの重要性を深め、確認する機会にしてきました。それに加え東日本大震災では津波の犠牲と被害が極めて大きかったことから、その痛苦の教訓を踏まえ「津波対策の推進に関する法律」が制定(11年)され、その中で毎年11月5日を「津波防災の日」にすると位置付けられました。
津波被害は日本だけではありません。04年12月のスマトラ島沖大地震によるインド洋大津波は約23万人もの犠牲を生むなど津波にどう立ち向かうかは国際的にも大きなテーマとなっていました。各国の議論の積み重ねから実現したのが「世界津波の日」といえます。
11月5日が選ばれたのは、江戸時代末期の安政地震(1854年)の発生の日で、その際の津波襲来時、稲わらに火をつけて村人を誘導して避難させた和歌山県内の人物の話に由来しています。
いま日本の津波への備えにとって重要なのは、安政地震の震源域にもなった「南海トラフ」で発生する巨大地震に対するものです。静岡県沖から宮崎県沖までのびる「南海トラフ」は100〜150年間隔で大きな地震が発生し、近い将来マグニチュード8〜9級の巨大地震と津波の起きる可能性が指摘されているだけに本腰を入れた対応は待ったなしです。地震発生から津波到達までの時間は東日本大震災より短いと想定される地域もあり、住民の命を守ることを最優先に警報の出し方、迅速な避難の仕組みづくりや訓練などきめ細かで万全な対策が急がれます。
原発再稼働は許されない
南海トラフ地震では中部電力の浜岡原発(静岡県)や四国電力伊方原発(愛媛県)の安全性への強い不安の声が上がっています。
津波などで電源喪失した東京電力福島第1原発の深刻な事故を経験したことを踏まえれば、原発再稼働の推進は到底許されず、原発ゼロの決断こそ必要です。