2017年10月30日(月)
21年ぶり 自民独占崩す 高知2区
共産党の底力に注目
自民党の元農水大臣との一騎打ちとなった衆院選高知2区で、市民と野党の共同候補、広田一氏(49)=無所属=が約2万票の大差で勝利しました。高知県内では21年ぶりに自民党独占を打ち破る歴史的快挙です。独自候補を降ろし、共闘に力を尽くした日本共産党の底力が注目されています。(高知県・浦準一、酒井慎太郎)
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「安倍政権に鉄ついを下す。そのために、重い重い決断をしてくれた」
22日夜、当確の一報を受けたインタビューで、広田氏がまず語ったのは、一本化のために立候補を取り下げた共産党の島ア保臣氏(34)への感謝の言葉でした。「安保法制廃止の大義を貫く広田さんの決意に応えた」という島ア氏は比例候補として駆け回り、「2区から自民党政治に代わる新しい政治をつくろう」と訴え抜きました。
流れ持続させる
選挙事務所に駆け付け、広田氏に花束を手渡した島ア氏。その場で仲間と抱き合って喜んだ無所属県議の上田(あげた)周五さん(67)はこうした光景に「共同して本当によかった。この流れを持続させたい」と語ります。県内の「広田一さんを応援する超党派議員連盟」会長です。
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広田氏が9万2179票を獲得したのに対し、自民党の山本有二氏(65)は7万1029票。広田氏は2区内の18市町村のうち15市町村で山本氏の得票を上回りました。
前回2014年の衆院選では、野党候補2氏の得票を合わせても、山本氏の得票を約1万1千票下回っていました。しかし、野党候補が広田氏に一本化された今回は一転、山本氏の得票を約2万1千票上回る圧勝でした。
上田さんは「有権者は政治が変わる可能性に一票を投じてくれたのだと思います。(勝てるという展望を示した)共闘の相乗効果ですよ」と指摘します。
今も地域根ざし
県内では、小選挙区制が導入された1996年の衆院選で共産党の故・山原健二郎氏が当選して以来、21年ぶりに自民党独占に風穴を開けました。「自民の牙城崩した『共闘』」。地元紙の高知新聞は23日付の社説で、こう見出しを立てました。
「朝日」高知版は「2区の衝撃」と題した連載の下(26日付)で、共産党の草の根の力を紹介。高知市の日曜市で国政報告し、市民と握手する故・山原氏の写真などを載せ、「地域に根ざす共産、今なお」と報じました。
高知2区 信頼という財産残した
共産党抜きに共闘語れぬ
市民と野党の共同を推進してきた市民団体、憲法アクションの事務局メンバーの一人も「自公政権に対抗し得る道は野党共同しかないことを証明した」と語ります。
「共産党の役割は大きかった」とも述べ、「選挙中のビラ11万枚のうち10万枚は共産党が配布してくれた。電話かけも熱心に動いてくれ、徹底していた」と振り返りました。
共産党の献身的な奮闘に、広田氏を支える中枢メンバーや保守層から「比例は共産党」と表明する人が相次ぎました。前出の事務局メンバーは「あんなに動いてくれたのに、共産党の比例票は伸びず、僕は無念で仕方ない」。
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信頼関係が醸成
27日、高知市内の2区地域。島ア氏は終日、街頭演説し「広田さん当選のために全力で応援してきた一人として、自分のことのようにうれしく思っています」と報告しました。
今回の画期的な勝利の意義を知ってもらおうと、投開票翌日から続けています。各所で手が振られ、声援も寄せられました。「市民が政治を変える新しい時代にふさわしく、共産党は元気いっぱい活動を発展させます」
土佐市の無所属市議で市内の広田選対の要の一人、大森陽子さん(67)は「選挙のたびに新しい友達ができ、楽しく、力いっぱいたたかえました。共産党抜きに共闘は語れん、ということがよくわかった」と力説します。
大森さんは言います。「一生懸命やれば、お互いに信頼関係が醸成されます。共産党は信頼という財産を残しましたね」