2017年10月29日(日)
“みそぎ”なんてとんでもない
加計疑惑 首相の関与こそ焦点
安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)の獣医学部新設申請について、文部科学省の審議会は、11月前半にも審査結果を出す見通しです。安倍首相は新設をめぐる疑惑について、「丁寧な説明」を約束しました。実際には、総選挙中もその後も、「丁寧」に説明しないままです。安倍首相ら疑惑に関わった政治家は再選しましたが、“みそぎ”が済んだわけではありません。(三浦誠)
選挙終え認可へ一直線
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加計学園は、安倍首相肝いりの政策である国家戦略特区で獣医学部新設の事業者に認定されました。
経緯を知る自民党関係者は言います。「あとは文部科学省の設置認可を待つだけだ。安倍首相も、総選挙で国民が信任してくれたとして、加計疑惑をこれ以上、説明しないだろう」
加計学園の獣医学部は、文科省の大学設置・学校法人審議会(設置審)で認可申請の可否を審査中です。林芳正文科相は27日の閣議後記者会見で11月前半に審査結果が出る見通しであることを明らかにしました。
文科省は獣医学部の新設を禁じていました。農林水産省は獣医師の需給が足りていると判断していたからです。その獣医学部新設を規制緩和するにあたり安倍内閣は2015年6月30日の閣議決定で、「既存の獣医師養成でない構想の具体化」など4条件をつけました。
文科省関係者は、「設置審では、4条件を審査しない」として、こう解説します。「設置審は教員数や施設などの基準をクリアしていれば認める」
選挙が終われば、説明責任を果たさぬまま認可へ一直線、というのです。
苦しい首相の答弁変更
仮に認可されても、安倍首相の疑惑は残ります。
安倍首相は6月の参院決算委員会で、加計学園の獣医学部設置の意向を知ったのは、愛媛県と同県今治市が国家戦略特区に提案した昨年6月4日だと答弁していました。加計孝太郎理事長から「時代のニーズに合わせて新しい学部や学科の新設に挑戦していきたいという趣旨の話は聞いたことがある」(衆院予算委員会)とも述べていました。
ところが7月24日の衆院予算委員会で突然、加計学園の意向を知ったのは同学園が事業者に決まった今年1月20日だった、と答弁を変えたのです。
実は、当初答弁のように、知ったのが昨年6月4日だとすると、安倍首相にとって不都合なことになるのです。この時、今治市が提案した資料には「加計学園」の文字はありません。あくまでも提案は愛媛県と今治市で、事業者は後に公募で決まる仕組みだからです。この時点で安倍首相が「加計学園だ」と知っていたならば、「誰から聞いたのか」と問題になります。
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国家戦略特区に関わった文科省関係者は、こう指摘します。
「安倍首相の答弁変更は相当苦しい。加計学園が前提だったので、最初はうっかり答弁したのではないか」
潔白いうなら証人喚問を
安倍首相は衆院選開票翌日の記者会見(23日)で、「前川(喜平・文科省)前次官も含めて、私から依頼された、また指示を受けたという方は一人もいなかった」とも述べています。選挙中のテレビ討論でも、まったく同じ言葉を繰り返してきました。
しかし、この間明らかになった内部文書や証言は、いずれも安倍首相がからんだものとなっています。
―和泉洋人首相補佐官が、前川前次官に「総理は自分の口から言えないから、私が代わりに言う」と加計学園の獣医学部設置を進めるよう迫った。
―内閣府が文科省に18年4月開学は、「総理のご意向」と説明した。
―萩生田光一官房副長官(当時)が「官邸は絶対やると言っている」「総理は『平成30年(2018年)4月開学』とおしりを切っていた」と文科省側に伝えた。
文科省関係者は「内部文書などからはっきりしているのは、総理の意向が『平成30年4月開学』ということだ」と指摘します。
また柳瀬唯夫首相秘書官(同)も、15年4月2日に官邸で今治市の担当者と面会していたのではないかと国会で追及されました。柳瀬氏は「記憶がない」「記録をとっていない」とかわしています。
「総理のご意向」を証明する側は、記録も記憶もあります。かたや安倍首相の関与を否定する側は、記録も記憶もないとするばかり。安倍首相は“潔白”を主張するなら、加計理事長ら関係者の証人喚問に応じるなど国会で徹底審議をすべきです。