2017年10月23日(月)
懸念抱えて“見切り発車”
「新専門医制度」登録開始
日本専門医機構は、2018年4月からの「新専門医制度」実施に向けて、内科や外科、小児科など19領域(診療科)の研修プログラムを受ける「専攻医」の登録を開始しています。「地域医療の崩壊につながる」との批判を受け実施が延期されていた同制度。多くの問題が残ったままです。 (北野ひろみ)
専門医機構が一元的に審査
専門医制度は、これまで資格を希望する医師に対して、診療領域ごとに各学会が方針や基準を定め、運用・認定してきました。
新制度では、「標準的な医療を提供できる医師」の養成をかかげて、第三者機関の日本専門医機構(以下、機構)が、専門医取得に必要な研修プログラムの審査などを一元的に取り扱います。医師免許取得後に2年間の「初期研修(臨床基本研修)」(必須)を受けた医師に対して、さらに3年以上の「後期研修(専門医研修)」を受けることを求めています。
専門医制度は、(1)各学会が独自に専門医の養成や認定を行っていたため基準が不統一で質にばらつきがある(2)100を超える専門医があり、患者や国民がわかりづらい―として制度見直しが検討されてきました。
しかし当初の新制度案は、日本医師会や四病院団体などから▽研修を実施する「基幹施設」が限定的で、地方や中小病院の医師が都市部の大学病院などに集中し、地域医療に影響を及ぼしかねない▽“大学医局中心の研修制度”の復活になりかねない――と批判や懸念が広がりました。
このため塩崎恭久厚労相(当時)は16年6月、「一度立ち止まって」判断すると表明。17年度からの制度導入を1年延期しました。
再検討しても不透明の指摘
機構は理事を刷新し、医療関係者や自治体の意見も聞きながら再検討。専門医の資格取得は義務としないことなど整備指針を定めました。
この検討に対しても、医師偏在の問題や、「基幹施設」選定のための審査過程の不透明性、働き方に柔軟性がなく、医師が妊娠・出産と両立させることが困難になるなどの問題が生じかねないと指摘がでています。専攻医が定員制のため医師数の抑制につながるなど多くの懸念があり、払しょくされていません。
11日、神奈川県保険医協会の医療問題研究会は新専門医制度が議論になりました。
日本医師会常任理事の羽鳥裕医師は、新専門医制度の狙いについて、“スーパードクター”になることが求められているのではないと指摘。信頼できる医療を受けたい患者・国民と、自信をもって医療を担える医師の養成のためにあるべきだと提起し、「専門医の仕組みの導入によって、現行の医療提供体制のバランスを崩さないようにすることが大切」だと求めました。