2017年10月16日(月)
主張
「原発ゼロ」の日本
再稼働を止めることが試金石
2011年3月の東日本大震災から6年7カ月―。大震災のさい重大事故を起こした東京電力福島第1原発の周辺住民は、いまだに6万人以上が避難生活を強いられています。被災者が国と東電の責任を問う裁判は各地で行われており、総選挙公示当日には福島地裁が、その責任を認める判決を出しました。被災者の怒りをかき立てているのは、当の東電の柏崎刈羽原発(新潟県)を含め、安倍晋三政権と電力業界が原発再稼働に拍車をかけていることです。再稼働を止めることが「原発ゼロ」の願いを実現する試金石です。
ひとたび事故が起きれば
福島原発事故が浮き彫りにしたのは、原発は危険な技術で、ひとたび事故を起こせば、長期間、広い地域に、これまで経験したこともないような大被害を及ぼすことです。「学者の国会」と言われる日本学術会議も最近の提言で、原発は「未完の技術」で、福島原発では事故処理のために過去の発電による売り上げを上回る資金が費やされると指摘しています。
原発に依存しない「原発ゼロ」の実現こそ世界の流れであり、圧倒的多数の国民の願いです。それに逆らって原発に固執し、電力会社と一体になって、福島原発事故後いったん全国で停止していた原発を、次々と再稼働させているのが安倍政権です。安倍政権は原子力規制委員会の審査に「適合」した原発は再稼働させると明言し、九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)、四国電力伊方原発3号機(愛媛県)、関西電力高浜原発3、4号機(福井県)を次々再稼働させました。九電玄海原発3、4号機(佐賀県)や関電大飯原発3、4号機、美浜原発3号機、高浜原発1、2号機(いずれも福井県)も「適合」と認めました。規制委の基準は国際基準以下で、避難計画も審査せず、「適合」とされても安全になるわけではありません。
原子力規制委は福島原発事故を起こした東電についてまで原発を運転する資格があると認め、事故を起こした福島原発と同じ「沸騰水型」の柏崎刈羽原発6、7号機も「適合」と認める審査書案をまとめています。東電の責任も、「欠陥」と言われる「沸騰水型」の問題点も不問にするものです。
かつて国内には50基を超す原発がありましたが、福島原発事故のあと全国の原発が約2年間停止し、いまも一部しか動いていなくても電力不足は起きません。「原発ゼロ」でやっていけることは明白であり、「原発ゼロ」を目指すなら再稼働は必要ありません。原発推進の安倍政権はもちろん、「原発ゼロ」を口にしながら「規制委が認めた原発の再稼働は認める」という希望の党などの態度は、国民の願いに反し、背くものです。
運転すれば危険高まる
再稼働すればそれだけで危険が高まるだけでなく、運転中は原爆の材料にもなるプルトニウムを含む使用済み核燃料がたまり続けます。計算上ではわずか6年ですべての貯蔵プールが満杯になります。使用済み核燃料の再処理はほとんど海外に委託しており、日本はプルトニウムを47トンも保有しています。原発の運転は、核兵器の拡散の点からも大問題です。
「原発ゼロ」の政治決断を行い再稼働は中止、再稼働させた原発は運転を停止し、廃炉のプロセスを進めることが喫緊の課題です。