2017年10月12日(木)
主張
生業訴訟福島判決
国は原発推進姿勢あらためよ
東京電力福島第1原発事故をめぐり、福島県と隣接する宮城、茨城、栃木の各県の住民約3800人が、国と東電の責任を問い損害賠償などを求めた「生業(なりわい)」訴訟の判決で、福島地裁は国と東電の法的責任を認めて賠償を命じる判決を言い渡しました。福島原発事故から6年7カ月、いまだ収束の見通しもたたず、なお6万8000人が避難生活を余儀なくされています。今回の判決は、事故の責任を認めないまま原発の再稼働をすすめる国・電力会社に対し、司法の側から厳しい警告を突き付けたものです。
対策を怠ったと断罪
福島原発事故によって被害を受けたり、故郷を奪われたりした人たちが国・東電の責任を問う訴訟は全国で約30にのぼります。今回、判決が出された「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟の原告は全国の同種の集団訴訟では最大規模です。これらの訴訟での判決は三つの地裁で出され、国の責任を認めたのは3月の前橋地裁判決に次いで2例目です。
今回の判決は、前橋地裁判決と同様に、政府の地震調査研究推進本部が2002年7月に公表した地震活動の「長期評価」に基づき、政府がシミュレーション(模擬実験)をしていれば原発敷地高を大きく超える「津波を予見可能であった」と判断しました。さらに同年末までに東電に対し非常用電源設備の安全確保を命じていたなら「事故は回避可能であった」と指摘したうえで、国が規制権限を行使しなかったのは「許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠いていた」と断じました。
津波は「想定外」と事故の責任を認めない国の主張をはっきりと退けたものです。
9月の千葉地裁判決は、国の責任を認めない不当判決でしたが、国の「予見可能性」については否定できませんでした。津波の危険を知りながら国が手をこまねいてきた事実は動かせません。経済的利益優先で安全対策を怠ってきた国・電力会社が根本からの反省を迫られていることは明らかです。
今回の福島判決が、放射性物質の汚染によって生活と生業を平穏に営む権利が侵害されたと原告団が訴えた問題で、人は「平穏な生活を妨げられない利益を有している」と認めたことは重要です。そのうえで、その侵害は被害の状況で判断すべきだとして、国の賠償基準である「中間指針」では対象外とされた事故後の放射線量が高かった県外住民や県内の一部の住民に賠償範囲を広げました。
原告は「被害救済の足がかりになる判決だ」とのべています。国は賠償のしくみを抜本的にあらため、被災者を分断する一方的な「線引き」や賠償の「打ち切り」のおしつけをやめるべきです。
再稼働ノーの声を示し
福島原発事故の被害が続いているのに、次々と原発再稼働をさせる安倍晋三自公政権と電力会社の姿勢は重大です。原発推進のため、福島原発事故を「終わったこと」にしようとする安倍政権を退陣に追い込むことが必要です。
22日投票の総選挙で「原発の再稼働」をかかげる自民党などに国民の審判を下すとともに、原発再稼働反対、原発ゼロにむけ、力をあわせる市民と野党の共闘の勝利、日本共産党の躍進が強く求められます。