2017年10月9日(月)
日本記者クラブ 党首討論
志位委員長の発言
日本共産党の志位和夫委員長は8日、日本記者クラブの党首討論会に出席し、総選挙の争点などについて与野党党首と討論しました。
■ 総選挙で何を訴えるか
市民と野党の共闘の勝利、日本共産党の躍進で、安倍暴走政治に退場の審判を下し、新しい政治をつくろう
最初に各党首が総選挙で「一番訴えたいこと」をボードに書いて、表明しました。志位氏は「安倍暴走政治に退場!」と書き、次のように述べました。
志位 安倍自公政権の5年間を振り返りますと、安保法制、秘密法、共謀罪、こんなに憲法をないがしろにしてきた政権はかつてありません。
沖縄新基地、原発再稼働、こんなに民意を踏みつけにしてきた政権もかつてありません。そして「森友・加計疑惑」。こんな異常な国政私物化疑惑にまみれた政権もかつてありません。
市民と野党の共闘の勝利、日本共産党の躍進で、安倍暴走政治に退場の審判を下し、新しい政治をつくる選挙にしていきたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。
■ 首相に問う
冒頭解散を強行した理由は何か―「森友・加計疑惑隠し」以外にない
首相、冒頭解散の理由を説明できず
続いて党首間の討論となり、志位氏は、安倍晋三首相に対し次のように質問しました。
志位 安倍さんに質問します。野党4党は6月22日に、憲法53条にもとづいて、一連の国政私物化疑惑の徹底究明のために、臨時国会召集を要求しておりました。ところが総理は、この要求を3カ月以上放置したあげく、国会を召集したと思ったら、一切の審議なしに冒頭解散を強行しました。
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冒頭解散をした理由はいったい何か。総理はその理由をこれまで一度も説明をしていません。総理はこの解散を「少子高齢化」「北朝鮮」という二つの「国難」を打開するための解散だといいます。しかし、それは冒頭解散の理由にはなりません。
臨時国会できちんと時間をとって、国政私物化疑惑を究明する、総理のいう二つの問題も含めて、争点を明らかにして、その上で国民に審判を仰ぐべきではなかったか。それをせずに冒頭解散を強行した理由はただ一つ、「森友・加計疑惑隠し」―。これ以外にないではないですか。そうでないというなら、冒頭解散の理由をはっきり説明していただきたい。
安倍首相は、「北朝鮮問題を解決していくリーダーシップをもって示していきたい」などというだけで、なぜ冒頭解散なのか説明できませんでした。
■ 首相に問う
唯一の戦争被爆国として核兵器禁止条約にサインすべきではないか
首相「核抑止力」を理由に反対
志位氏は、核兵器禁止条約について安倍氏に次のように質問しました。
志位 核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)がノーベル平和賞を受賞しました。これは核兵器禁止条約のために命がけで頑張ってきた広島・長崎の被爆者をはじめとする市民社会の努力を高く評価したものであり、私は心から歓迎したいと思います。
核兵器禁止条約は「核兵器の使用の威嚇」すなわち、“いざというときは核を使うぞ”という脅しによって安全保障を図ろうという「核抑止力」論も禁止しています。世界の多数の国がこの流れに合流しているときに、唯一の戦争被爆国の日本の政府が、「核の傘」にしがみついてこれに背を向ける態度をとっていいのか。
核兵器禁止条約の国連会議では、私も参加しましたが、被爆者の方々から、日本政府の態度に、「心が裂ける思いだ」「母国に裏切られた」などの批判が相次ぎました。総理はこうした被爆者の声をどう受けとめますか。これまでの態度をあらためて日本政府として禁止条約にサインすべきではありませんか。
安倍氏は「核保有国は強く反対している」「核抑止力を否定しては日本の安全を守れない」と述べ、核兵器固執勢力の立場にたって禁止条約を否定する姿勢を示しました。
■ 維新の質問に答えて
地方自治・住民自治を否定する維新「都構想」には党派の違いを超えて反対する
維新の会の松井一郎代表から志位氏に対し、「大阪において自民党と共闘してわれわれとたたかうのはどういう意味か」と質問があり、志位氏は次のように答えました。
志位 これは大阪維新がやっている政治があまりにもひどい。この点につきます。結局、「都構想」と言っていますが、地方自治を否定するものになっています。この前、堺市長選がありました。この堺の市長選挙では「堺は一つ、堺の自治を守ろう」ということで保守の方々もわれわれも結束をしてたたかって、勝利しました。
やはり地方自治を大事にする。そして住民自治を大事にする。1人の司令官にお金も権限も全部集中するような「都構想」には党派の違いを超えて反対する。これは、原則的かつ柔軟な態度だと考えています。大阪で維新がやっていることはあまりにひどすぎる、だからそういう協力でやっています。
■ 維新の再質問に答えて
堺市長選で市民の審判は下った。この結果を受け入れるべきだ
これに対して維新・松井氏は志位氏に再質問。「大阪では教育無償化を高校まで実現している。どこがひどいのか」「国会議員の文書通信交通滞在費を公開すべきではないか」と質問し、志位氏は次のように答えました。
志位 文書交通滞在費については、公開していきたいと思います。
なぜひどいかというと、高校の授業料はいいですよ。しかし、私が言ったのは、自治の問題なんです。1人の司令官に、お金も権限も吸い上げてしまい、自治をバラバラにしてしまおう。堺も吸収合併してしまおう。こういうやり方というのは地方自治の原則に反するといっております。だからこそ、堺で審判が下ったじゃないですか。あなた方は審判を受け止めるべきです。
■ 首相に問う
北朝鮮問題―先制的な軍事力行使は絶対にやってはならないと米国に求めるべきだ
首相「米国の方針を支持する」
志位氏は、北朝鮮の核・ミサイル開発問題について、安倍氏に次のように質問しました。
志位 北朝鮮による核・ミサイル開発は断じて容認できません。国連安保理決議の厳格な全面的な実行が必要です。
同時に破滅をもたらす戦争は絶対に起こしてはなりません。この点で、私が大変危ぐしているのは、安倍さんが、「すべての選択肢はテーブルの上にあるという米国の立場を一貫して支持する」と繰り返していることです。
ここでいう「選択肢」のなかには、軍事的選択肢すなわち、「先制的な軍事力行使」も含まれます。実際、1994年の核危機の際には、米国は北朝鮮の核施設を(巡航ミサイル)トマホークで破壊する、という先制攻撃の一歩手前までいきました。このときは韓国の当時の、金泳三大統領が直談判して止めました。
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総理に端的に問いたいと思います。北朝鮮の軍事挑発は絶対に容認できませんが、それに対して、「先制的な軍事力行使」で対応したら、破滅をもたらす戦争になります。「先制的な軍事力行使」は絶対にやるべきではないと、米国に求めるべきではありませんか。はっきりお答えください。
安倍氏は、「米国の方針を支持しています」として先制的な軍事力行使をやるべきではないとは絶対にいわず、「圧力を高めて北朝鮮に政策を変えるから話し合ってもらいたいという状況をつくる必要がある」と繰り返すだけでした。
■ 首相の質問に答えて
首相「自衛隊は違憲という立場を連合政権は取るのか」
国民の合意が成熟するまでは、政府としての憲法解釈は合憲という立場を一定期間引き継ぐ
安倍氏は、志位氏に対し、「共産党が入る連合政権ができたとき、自衛隊は違憲だという立場を取るのか。そんなことをすればすぐに自衛隊を解消しなければならなくなる」と質問し、志位氏は次のように答えました。
志位 日本共産党は、自衛隊と憲法9条は両立しえないものだと考えております。
私たちは、9条という理想に向けて、自衛隊の現実を国民の合意で一歩一歩改革していく。これが私たちのプランです。それで、私たちが参画した政権ができて、平和政策によって、日本をとりまく平和的環境が成熟して、もう自衛隊なしでも安心だという合意が圧倒的多数の国民のなかで成熟したときにはじめて、9条の全面実施の措置を取るというのが、私たちのプランです。
そこで、私たちが参画する政権が仮にできた場合の対応ですが、その政府としての憲法解釈は、その政府が自衛隊の解消の措置をとる、すなわち、国民の圧倒的多数のなかで自衛隊は解消しようという合意が成熟するまでは、合憲という解釈を引き継ぐことになります。党は違憲という立場を一貫して堅持しますが、政府は合憲という立場を一定程度の期間、取ることになります。
そして、最終的には(憲法判断を)検討することになりますけれど、そういう立場を堅持しますので、ご心配のようなことは起こらないということを答弁しておきたいと思います。
■ 記者からの質問に答える
記者「天皇制・自衛隊―共産党が変わったのはなぜか」
綱領の全面改定で原則を守りながら幅のある対応が可能になった
続いて記者からの質問に移り、志位氏に対して「最近の共産党は、当面の間は天皇制も認め、自衛隊についても(共産党が参画した政府の憲法解釈として)しばらくの間は合憲とするという。かつての共産党からみればずいぶん変わった感じがするが、どうして変わったのか」と質問。志位氏は次のように答えました。
志位 2004年に党綱領の全面改定をやりました。そのときにいまの天皇制の問題、自衛隊の問題でかなり踏み込んで解明をやりまして、それぞれの位置づけについて現実に即した対応ができるような整備をやりました。ですからこの綱領が基になっています。
綱領ですでに先ほど述べた自衛隊の段階的な改革の問題、あるいは天皇の制度について、私たちは、民主共和制をめざすという立場に立つけれども、そのために運動をやったり、たたかいをやったりするんじゃない。決めるのは国民です。将来、(情勢が)熟したときに国民が存廃の是非を決める、国民が決めることだということも決めております。ですからこの綱領改定で、非常に私たちは原則を守りながら幅のある対応ができるようになったと考えています。
記者 言葉を変えていえば、前はあまりよくなかった、間違っていたなということですか。
志位 いやいや、それはやっぱり時代の発展とともに私たちも変わるべきところは変わると。それからこの間の野党共闘についていえば、2015年9月に安保法制が強行されて以降、それまで私たちは単独で国政選挙をずっとたたかうということをやってきましたけれども、やはりここで私たちも変わんなくちゃいけないということで、選挙の方針も変え、選挙協力をやりながらたたかうという方針にしてきました。やはり協力をしなかったら政治は変えられませんから。
■ 改憲勢力にどう立ち向かうか
安倍政権のもとでの9条改憲に反対―3野党と市民の共闘の力で押し返していく
また憲法問題をめぐって「憲法改正すべきだという勢力がだんだん広がっていく可能性が出ている。護憲政党が少数派になっていくなかで、どうやって護憲派の灯を世の中に伝えていくか」との質問が出され、志位氏は次のように答えました。
志位 私は今度の選挙は、共産党、立憲民主党、社民党で、できるかぎりの連携・協力してやっていきたいと思うんですが、市民連合のみなさんと合意した政策合意のなかに、「安倍政権の下での9条改憲には反対する」というしっかりとした合意があります。
ですから、この共闘の力で今の流れをくい止め、押し返していきたい。
(立憲民主党の)枝野さんとは憲法に対する考え方、違いもあります。しかし、今やられようとしているやり方は反対だと。少なくとも、いま憲法に書き込まれようとしている自衛隊は、安保法制が実行できる自衛隊になっている。すなわち憲法違反の集団的自衛権が実行できる自衛隊を書き込むことになれば、これは違憲の法律を合憲化することになる。だから反対だという論理は、枝野さんのところとも共通しているんですね。
ですから、まずは共闘の力で多数派をつくり、そして国民的な多数派をつくっていく努力をしていきたいと思っています。