2017年10月9日(月)
ネット 党首討論
志位委員長の発言
日本共産党の志位和夫委員長は7日夜に行われた衆院解散後初の「ネット党首討論」(ニコニコ動画)で、北朝鮮の核・ミサイル問題をはじめとする外交・安全保障や憲法改定などについて与野党党首と論戦を交わしました。
北朝鮮問題―「対話による平和的解決」のイニシアチブを
安倍晋三首相は、安保法制=戦争法を挙げて「日米はかつてない規模の共同訓練を行い、大きな抑止力を発揮している」と軍事的対応にしがみつきました。「希望の党」の小池百合子代表は「これまで積み重ねてきた国の安全保障政策を基礎として」と述べ戦争法容認の考えを示すとともに、「憲法改正への論議も避けては通れない。広く国民的な議論を展開していく」と改憲推進を表明しました。志位氏は、北朝鮮問題の解決の道について、次のように述べました。
志位 北朝鮮の核・ミサイル開発はもとより断じて容認できません。同時に破滅をもたらす戦争だけは絶対に起こしてはなりません。
いまの一番の危険はどこにあるか。それは米朝の軍事的緊張が高まるもとで、当事者たちの意図にも反して、偶発的事態や誤算から、軍事衝突が起こることです。軍事衝突がひとたび起こったら戦争に発展する(危険がある)。そしてその戦争は核戦争です。そうした事態は絶対に回避しなければなりません。
私たちは、危機打開のために、米朝が直接対話に踏み出すことが必要だと提唱してきました。そして経済制裁の強化と一体に「対話による平和的解決」に力を尽くすべきだと主張してきました。日本政府は「対話否定」の立場を改めて、「対話による解決」のためのイニシアチブを発揮すべきです。
「軍事的選択肢」とるべきでないと米国に迫るべきだ
続く討論で安倍首相は、社民党の吉田忠智党首から米朝首脳会談の実現への姿勢を問われると、1994年の「枠組み合意」、2005年の6カ国協議の合意を北朝鮮が破ってきたとして、「対話のための対話は意味がない」と発言。これに対し、志位氏は、対話を拒否してきたことがいまの危機を招いていると批判しました。
志位 いま安倍さんは、「二つの合意を破棄してきたのは北朝鮮だ」とおっしゃいました。それはその通りだと思います。
ただ問題は、そのあとだと思います。オバマ政権になって「戦略的忍耐」ということで「北朝鮮が非核化のための意思と行動を示すまでは対話に応じない」という「対話拒否論」をとってきたことが、その間、北朝鮮の核・ミサイル開発を野放しにしてしまった。ですから、対話をしなかったことが今の事態を招いているわけで、私は、ここは対話に踏み込むことが大切だと思います。
これに対し安倍首相は、「『戦略的忍耐』のなかで対話はしなかった」と認めながら、「同時に圧力もかけてこなかった」とあくまで“圧力”を強調。志位氏は、日本政府の立場を具体的にただしました。
志位 安倍さんは繰り返し、「『すべての選択肢はテーブルの上にある』という米国政府の立場を支持する」といわれております。この「選択肢」にいった場合、「軍事的選択肢」―すなわち「先制的な軍事力の行使」も入ってくるわけですね。
北朝鮮の軍事挑発は断じて許されませんが、それに対してそうした軍事オプション(選択肢)で対応するということになると、深刻な戦争の危険が生まれてくると思います。私は、「軍事的オプションはとるべきではない」とはっきり米国に迫るべきだと思いますがいかがですか。
安倍首相は「圧力によって北朝鮮の政策を変えさせたい。だれも、紛争なんか望んでいない」と述べるだけで、米国に「軍事的オプション」をとらないよう求める姿勢は述べませんでした。
安倍9条改憲に反対―この一点で力を合わせよう
憲法9条の1項(戦争放棄)、2項(戦力不保持・交戦権の否認)を残したまま、自衛隊の存在を明記するという安倍首相が打ち出した9条改憲について、立憲民主党の枝野幸男代表は「自衛隊合憲は自民党歴代政権がずっと言ってきたことであり、いまさら条文に書かなければならない必要性はない。むしろ違憲の安保法制が存在するなかで自衛隊を明記をすればそれを追認することになる」と批判。社民・吉田氏も「戦争法=安保関連法にお墨付きを与えることになる」と述べました。志位氏は、安倍9条改憲の狙いを指摘しました。
志位 安倍首相は「9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」といいます。そうするとどうなるか。それは単に存在する自衛隊を憲法上、合憲化するというだけにとどまりません。
法の世界では「後からつくった法は、前の法に優先する」ということが一般原則として言われます。ですから、たとえ2項を残したとしても、後から別の項目で自衛隊が明記されたら、そちらが優先されて2項が空文化=死文化してしまうことになる。そうなると無制限の海外での武力の行使が可能になる。
そして総理が書き込もうという自衛隊は、安保法制によって集団的自衛権行使が可能になった自衛隊です。そうした自衛隊が書き込まれれば、憲法違反の立法が合憲化されることになります。
私は、安倍首相の9条改憲に反対しよう―この一点で力を合わせることを訴えたいと思います。
自公とその補完勢力は、「自衛隊をしっかりと憲法に明記することで(違憲か合憲かの)不毛な論戦をなくしていく」(安倍首相)、「(自民党の自衛隊の憲法明記の提案を)見守っていきたい」(公明党の山口那津男代表)、「必要に応じて憲法を変えるべき」(希望の党の小池百合子代表)、「憲法はいまの時代にあっているのか」(日本維新の会の松井一郎代表)と9条を含む改憲で足並みをそろえました。
9条の理想に向け自衛隊を一歩一歩変え、国民合意が成熟して初めて9条完全実施に
党首間の討論では、志位氏が提起した憲法9条2項と自衛隊の存在明記の関係について議論になりました。
志位 これまで政府は9条2項との関係で自衛隊を説明してきたと思います。すなわち自衛隊は「戦力にあたらない必要最小限度の実力組織」だと。したがって海外での武力行使はできない、集団的自衛権の行使はできない、こういう論理構成だったと思います。
ところが、2項とは別の項目で自衛隊が根拠付けられますと、それを根拠にしてさまざまな法律がつくられて、2項の制約がそこに及ばなくなるのではないでしょうか。つまり海外での無制限の武力の行使が可能になるのではないでしょうか。
これに対し安倍首相は「2項がある以上は『必要最小限』という制約はかかっており、制約は変わらない」というだけで、志位氏の提起した論点に答えられませんでした。維新・松井氏は「自衛隊が違憲なら、憲法を見直すのか、自衛隊をそもそもなくすのか、どちらを向くのか」と志位氏に質問。志位氏は次のように答えました。
志位 私たちは、憲法9条と自衛隊は両立しえないと考えています。どちらを変えていくのか。それは、憲法9条の理想に向けて自衛隊の現実を一歩一歩変えていく。すぐにはなくすことはできません。国民の多数の合意が成熟して、初めて解消に向けた措置をとることができる。すなわちまわりの国々との友好関係が成熟し、日本を取り巻く平和的環境が成熟して、「もう自衛隊がなくても安心だ」と圧倒的多数の国民の合意が成熟して初めて9条の完全実施に踏み出すことができます。
日本共産党参加の政府―政府としては自衛隊解消の国民的合意が成熟するまでは、自衛隊合憲の解釈をとる
9条の完全実施=自衛隊解消をめぐり、安倍首相、公明・山口氏と志位氏とやりとりになりました。
安倍首相 共産党がどの党と連立するか分かりませんが、政権をとって志位さんが総理大臣になって、私が質問して自衛隊は合憲ですかと聞いて、志位さんが「違憲だ」と言った瞬間に自衛隊法は違憲立法になってしまうわけでありまして、徐々にということはできない。そのなかでもし侵略を受けたときにどうするんですか。それとまた災害が起きたときに災害出動もできなくなるという現実に直面しますよ。
志位 私たち日本共産党としては、自衛隊は違憲という立場ですが、日本共産党が参加する政府ができた場合に、その政府としての憲法解釈はただちに違憲とすることはできません。しばらくの間、合憲という解釈が続くことになります。これは、国民多数の合意が成熟して9条の完全実施に向かおうとなったところで初めて政府としては憲法解釈を変えて違憲にすると。それまでは合憲ということになります。
党の立場と政府の立場が違うということをおっしゃるかもしれないけど、自民党だって党と政府で違う立場をとっているわけですから。
山口 国民の大多数が合憲と考えているわけですから、共産党が違憲と言い続けないと国民の意識は変わらないと思いますよ。また、政府をどうやって形成するのでしょうか。
志位 だから言っているじゃないですか。党として違憲という立場は変わりません。ただ、私たちが参加する政権ができたとしても、その政権はすぐに自衛隊を解消する措置は取れないんですから。安倍さんがおっしゃる通りですよ。私が仮に総理になったとして「違憲」ともし言ったとしたら、これはその瞬間に解消の措置をとらないといけません。ですから、政府の立場としては合憲という立場を引き継ぐことになるんです。これは、合意が成熟して初めて憲法解釈を変える。安倍政権のように合意がないところで憲法解釈を百八十度変えるようなことはしないんですよ。
違憲の安保法制をつくって、海外で命を張れこそよっぽど無責任
「希望」・小池氏は、1994年に自社さ政権が発足した際、「社会党は一夜にして(自衛隊違憲から合憲へと)立場を変えた。志位さんも同じことになるのではないか」と質問しました。
志位氏は、次のように答えました。
志位 私たちは党としては違憲という立場は変えません。しかし、私たちが参画する政権ができたとしても、憲法判断を変えるのは情勢が熟したときじゃないとできないと言っているわけです。ですから、これは自社さのようなことに私たちはならないので、ご心配いただかなくても結構です。
それでも小池氏は、「『しばらくの間』『当面の間』(合憲の解釈は続く)ということは無責任ではないか」と志位氏に質問。安倍首相も「小池さんとまったく同じ意見。あまりに無責任」と加勢しました。志位氏は反論しました。
志位 「しばらくの間」ということを説明したいと思うんですが、私たちが政権に参画したとして、その政権がすべての国々と平和的な友好関係を築く。そして日本を取り巻く平和的な環境が熟すると。それを見て国民の圧倒的多数が「もう自衛隊がなくても安心だ」というところまできて、初めて9条の完全実施に取り組むということです。
それから安倍さんから「無責任だ」と言われたけど、私はその言葉を返したいと思いますよ。憲法違反の安保法制をつくって、海外で命を張れということの方が、よっぽど無責任だと思いますよ。
「希望」小池氏
“自民と違いはない”
このテーマの最後に志位氏は、小池氏に質問しました。
志位 せっかくの機会ですので小池さんに質問したいと思います。小池さんの「希望の党」の公約を拝見しますと、「安保法制は容認」「9条を含む憲法改正」を訴えておられる。そして「原発ゼロ」と言っておられますけども、「再稼働は容認」となっております。
そうしますと、国の政治の根幹部分は自民党とどこが違うんでしょうか。安倍総理は、(「希望」と)「基本的理念は一緒だ」と言われました。それは安倍さんと意見が一致しているんですよ。同じなんでしょうか。
小池 私は、安倍政権のもとにおきまして外交そして安全保障、NSC(国家安全保障会議)の設立などに携わり、かつ防衛大臣に任命をしていただきました。そういった点で違いはございません。もしあったならば、これまでの私の役割ということが否定されてしまうということでもございます。何が違うかというと、しがらみがないということであります。新しい党でございます。受動喫煙について考えていただきたいと思います。東京ではすでに進んでおります。
「希望」が、自民党の補完勢力であることを党首自ら認めた発言となりました。
北朝鮮とどう話し合いをするか―ユーザーからの質問に答えて
ネットユーザーから寄せられた質問に各党首が回答しました。志位氏には、「北朝鮮問題について公約で『対話による平和的解決』をうたっていますが、北朝鮮とどう話し合いをするのですか」という質問があり、次のように答えました。
志位 やはり米朝両政府間の対話がいま急がれると思います。この点で私は、ティラーソン米国務長官、マティス米国防長官が連名でウォール・ストリート・ジャーナルに寄稿して、北(朝鮮)がこれ以上の軍事挑発をやめれば対話の用意があると、8月上旬ですが言ったことに注目しました。さらに、ティラーソン長官が最近、北京での会談のさい、「いま複数のルートで対話している」「北が対話する意思があるかどうか探っているところだ」というふうにいったことも注目しております。
アメリカは軍事的選択肢を一方で持っておりますが、対話の模索もあきらかにやっていると思います。ぜひ米朝両国が対話に入るのがたいへん大事だと。対話は北朝鮮に対する譲歩ではありません。北の核保有を認めるものでもありません。ぜひ米朝両国が対話に入り、前向きの合意ができれば、6カ国全体を担保すると。これがベストだと思っております。
市民と野党が心一つに力合わせれば安倍政権は倒せる
最後に、ネットユーザーへ訴えたいメッセージとして志位氏は次のように述べました。
志位 私たちは、この2年間、市民と野党の共闘に取り組み、たしかな成果をあげてきたと考えております。昨年の参議院選挙では全国32の1人区のすべてで野党統一候補を実現し、11で勝つことができました。新潟県知事選挙、仙台市長選挙でも勝つことができました。
市民と野党が一つに力を合わせれば安倍政権を倒すことができるというのは、日本の政治のもう試されずみの現実だと思います。ぜひこの共闘の流れを総選挙でも大きく発展させていく決意でございますのでお力添えをよろしくお願いいたします。