2017年9月16日(土)
主張
柏崎刈羽の審査
東電に原発再稼働の資格なし
原子力規制委員会が東京電力柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)の再稼働をめぐり、東電に原発を動かす資格を条件付きで認めたことに「福島を忘れたのか」と批判と怒りの声が広がっています。規制委は再稼働の前提である新規制基準に6、7号機が「適合」したとする審査書案を近く取りまとめるとしています。東電の福島第1原発事故は6年半がたっても収束のめどはなく原因究明や賠償、廃炉も道半ば、生業(なりわい)と故郷を奪われた住民の苦難は続いています。未曽有の事故を起こしたことに反省のない東電に原発を再稼働させる資格はありません。
規制委が初のお墨付き
柏崎市と刈羽村にまたがる柏崎刈羽原発は、合計7基、総出力821万キロワット余と世界最大の規模です。原子炉のタイプは重大事故を起こした福島第1原発と同じ「沸騰水型」です。福島と同型の炉が事故後初めて「適合」と認められることになります。しかも東電の原発として初めて“お墨付き”を与えられることにもなります。
もともと柏崎刈羽原発は地震や津波のリスクの高さも指摘されています。実際、2007年の中越沖地震で被災し、3000カ所以上のトラブルが発生しました。
ところが東電は「(福島第1原発の)廃炉のお金を稼ぐことが一義的に一番重要」(小早川智明社長)と、福島事故の被害者への賠償の打ち切りなどをする一方、“1基動かせば年間500億円の利益”と柏崎刈羽原発の再稼働に執念を燃やしてきました。原発の再稼働を進める安倍晋三政権は、柏崎刈羽原発再稼働を前提にする経営「再建」計画を東電と一体でつくりました。福島・新潟県民、国民の願いを踏みにじる姿勢です。
東電には、利益優先で安全軽視、トラブル隠ぺい、データ改ざんなど根深い体質があります。今回の規制委の審査でも今年2月、事故対応時の重要施設の耐震性不足を社内では把握しながら規制委には事実と異なる説明をしていたことが発覚し大問題になりました。こうした東電を“合格”させようとする規制委の対応は全く道理がありません。
規制委は柏崎刈羽原発の審査にあたって、東電が事故を起こした事業者であり、事故処理に当たっていることを挙げ、原発を動かす「適格性」(資格)の判断も必要としていたはずです。7月には東電社長らと面談した規制委の田中俊一委員長は「覚悟と具体的な取り組みが見えない」と批判していました。それが8月末に東電が出した“決意表明”なる回答書を事業者が順守すべき保安規定に盛り込むことなどを条件に、東電の「適格性」が担保されたなどと一転させました。そのうえ規制委は、福島事故は「東電の技術的能力が欠けていたがゆえに起きたととらえるべきではない」とする見解まで示しています。規制委の東電擁護はあまりに重大です。
運転許さない世論広げ
新潟県の米山隆一知事は、県独自に委員会を立ち上げ、福島事故の原因、避難、健康の検証を進めています。検証なくして原発再稼働の判断はできない、との立場です。仮に規制委で審査書案がまとまっても6、7号機が運転できる見通しはありません。道理のない再稼働を許さない世論を広げるときです。