2017年9月14日(木)
北朝鮮問題を考える
語ろう 日本共産党
北朝鮮による核実験や弾道ミサイル発射が深刻な脅威になっています。「やっぱり怖い」「危機はどうしたら防げるの」など、さまざまな疑問や不安が渦巻いています。この問題を一緒に考えてみましょう。
軍事衝突は絶対に回避しなければならない
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A 北朝鮮の核実験や弾道ミサイルの発射は、世界と地域の平和と安定にとって重大な脅威です。何度もあげられた国連安保理決議、北朝鮮も含めた6カ国協議の共同声明(2005年)、日朝平壌宣言(2002年)に反する暴挙であることも明白です。とくに通告なしに日本列島を飛び越える弾道ミサイル発射などは、きわめて危険な行為です。核実験も、核兵器をなくそうという国際社会の流れに真っ向から背くものです。
こうした北朝鮮の暴挙はきびしく糾弾されなければなりません。
北朝鮮はなぜこんな暴挙を繰り返すのか。多くの専門家が、それは米国へのけん制であり、自らの体制の安全と存続をはかるためだと指摘します。
ですから、危機を打開するためには、制裁の強化と一体に米朝の直接対話をはじめとした平和的・外交的解決を粘り強く追求するしかありません。
万が一、核兵器や弾道ミサイルが実際に使用されたら壊滅的な被害がでます。世界と地域の平和と安定を破壊し、おびただしい犠牲をもたらす軍事衝突は絶対に回避しなければなりません。
偶発や誤算による軍事衝突が一番危険
Q 北朝鮮問題でいま一番危険なことはなに?A 安倍政権は「一方的に緊張を高めているのは北朝鮮だ」「北朝鮮が暴挙に出なければ、軍事衝突にはならない」(河野太郎外相)などといっています。緊張の激化という点では、北朝鮮の側により大きな責任があることは明らかです。
同時に、いま最大の危険は、北朝鮮と米国との軍事的緊張がエスカレートするもとで、当事者たちの意図にも反して、偶発的な事態や誤算などによって軍事衝突が引き起こされる現実の可能性が生まれ、強まっていることです。北朝鮮が暴挙と挑発を繰り返す一方で、米国もB1戦略爆撃機やF35ステルス戦闘機を展開したりしました。
ジェフリー・フェルトマン国連事務次長は国連安保理会合で、「緊張が高まるにつれ、まさに誤解、判断違い、エスカレーションのリスクが高まっている」とのべました。
米国のペリー元国防長官やシュルツ元国務長官はじめ北朝鮮問題特使や上院外交委員長の経験者ら6氏がトランプ大統領あてに出した書簡(6月28日)でも、「現今の主要な危険は、北朝鮮が核による奇襲攻撃を開始するかもしれないということではない」「最大の危険は、戦争につながる可能性のある計算違いや誤解である」とのべています。
ですから、この危機を打開する道は、米朝の直接対話以外にはないのです。
いまこそ対話で安全確保 対話は譲歩ではない
Q 北朝鮮が一方的暴挙を続けるもとで、「今は対話の時ではない」との声もあるが。A 偶発的事態であれ、誤算であれ、軍事衝突が引き起こされるならば、地域に与える損害は計り知れず、その被害は日本にも深刻な形で及びます。マティス米国防長官も「信じられない規模での悲劇が起きる」(5月19日の会見)とのべています。
ですから、軍事衝突はなんとしても回避しなければなりません。そのためには、米朝両国に強く自制を求めるとともに、現在の危機を打開するために、直接対話に踏み出すしかありません。「今は対話の時ではない」どころか、今こそ対話に踏み出す時です。
9月11日の国連安保理決議も「緊張を緩和する努力」「対話を通じた平和的で包括的な解決」を加盟国に呼びかけています。
対話は北朝鮮への譲歩にならないのか、あるいは弱腰とみられないかという声もありますが、そんなことはありません。それは、北朝鮮への譲歩でもなく、まして核武装を容認することでもありません。とりわけ、無条件の直接対話ということは、北朝鮮にも何らの条件もつけさせないということです。こうした措置は、軍事衝突による悲劇を避けるための意思疎通に必要な手段なのです。
小泉政権下で対北朝鮮外交を担った田中均元外務審議官も「外交的解決を見出すことが最重要であり、日本の安全確保のための唯一の重要な手段だ」(5日、外国特派員協会での講演)と主張しています。
「金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は対話の相手になるの?」という疑問も一部にありますが、相手がだれであれ、対話の道を閉ざしたら、対立と緊張の激化が続くだけです。ペリー氏らの書簡では「金正恩は理性を失っているわけではなく、自身の体制を維持することに重きを置いている」と指摘しています。
対話がなかった結果がいまの危機
Q 対話してきた結果が今の危機ではないか?A それは事実と違います。
オバマ米政権は、2012年以降、「北朝鮮が非核化の意思を示さない限り交渉に応じない」と強調してきました。「戦略的忍耐」といわれる、この方針のもとで北朝鮮との対話も途絶えていました。この間に北朝鮮は核兵器・ミサイル開発をどんどん進めてしまいました。結果をみれば、この方針は失敗だったことは明らかです。
日本共産党の志位和夫委員長は、トランプ米政権が「戦略的忍耐」方針の変更を議論していることが明らかになったとき、米政府自身がこの方針の破たんを認めたこと、同時に先制攻撃などの軍事的選択肢は絶対にとってはならないことを指摘。外交交渉のなかで北朝鮮に非核化を迫れという提唱を行いました。(2月19日)
「戦略的忍耐」という、対話に応じない方針の破綻が明らかになった今こそ、対話による解決しかないことは明らかです。
圧力一辺倒の対話否定論は国際的にも異常
Q 日本政府の対応をどうみる?A 安倍政権は「今は対話の時ではない」「異次元の圧力を」などといって、あからさまな対話否定論にたっています。
米政権自体が軍事圧力を強化しつつも、対話を模索しているのに比べても、安倍政権が圧力一辺倒の対話否定論に固執しているのは異常です。
一方で安倍政権は、「米国は日本に対し拡大抑止(核兵器による抑止)を含む抑止力を提供している」(河野外相)と核兵器によるどう喝を容認したり、軍事力を含むすべての選択肢をテーブルの上に乗せているという米政府の発言を「歓迎」したりしています。
さらに、北朝鮮問題を、大軍拡に利用する党略的態度をとっています。来年度予算の概算要求では、専門家が迎撃は技術的に困難と指摘する「ミサイル防衛」などに、過去最大の5・2兆円もの軍事費を要求しました。
米外交専門誌では安倍政権の対応について、「安倍は政治的な直感から、北朝鮮の挑発には断固とした立場を取らずにはいられない。だが過去に何度も同じ立場を取り、すべて失敗した。今や日本に残された選択肢はなく、タカ派としての安倍の面目も失われつつある」ときびしく批判。「安倍は絶対に嫌がるだろうが、日本にも1つだけ選択肢が残っている。北朝鮮との直接交渉だ」という米テンプル大学日本校のジェフ・キングストン教授(現代アジア史)のコメントを紹介しています。
(米誌『ニューズウィーク』日本版―外交専門誌『フォーリン・ポリシー』からの転載)
Jアラート必要としない外交解決の道へ
Q Jアラートにびっくりした、どこに逃げればいいか「不安」になってくる。A 北朝鮮による8月29日の弾道ミサイル発射の際、けたたましいJアラートにびっくりして、不安に駆られた人は多いのではないでしょうか。
政府が国民に事実にもとづく的確な情報をすみやかに提供することは必要ですが、過剰な反応をあおるようなことがあってはいけません。
8月29日に発射された弾道ミサイルの最高高度は約550キロで、日本の領空のはるか上を飛びました。政府は「ミサイル発射直後からミサイルの動きを完全に把握している」(安倍首相)とのべましたが、それなら北海道から長野県まで12道県という広範囲でJアラートを発動する必要があったのか、それらを含めて冷静な検証が必要です。
また、鉄道の運行停止、学校の休校などの措置も同様に過剰ではなかったのか検証が求められます。
米外交専門誌は「Jアラートも強硬な言葉も日本人の生命を守り北朝鮮に挑発をやめさせる役には立たない」と指摘しています。(米誌『ニューズウィーク』日本版―外交専門誌『フォーリン・ポリシー』からの転載)
日本政府に必要なのは、Jアラートや避難を必要としない状況をつくることであり、そのためにも米朝の対話を促し、外交解決の道に戻すために力をつくすことです。