2017年9月8日(金)
主張
待機児童の連続増
いつまで“狭き門”続けるのか
認可保育所(園)などを希望しても入れなかった待機児童が今年4月で2万6081人にのぼると厚生労働省が発表しました。昨年より2528人も増え、3年連続の増加です。東京都の認証保育所など自治体単独事業を利用している子どもなど「隠れ待機児」は6万9224人でした。こちらも昨年と比べ1870人増です。昨年春、「保育園落ちた」の怒りのブログを機に待機児問題が大きな議論になったのに、改善どころか深刻化していることは重大です。いつまで保育所を“狭き門”にし続けるのか。認可園を中心にした保育所の大増設は、待ったなしです。
「働くな」と言われたよう
「20園以上申し込んだのに入れなかった」「3年続けて認可園がだめだった」「まるで働くなと言われたようだ」。今年の春も、保育所に入れなかった親たちが悲痛な声を上げ、自治体へ不服審査を求める行動が各地で相次ぎました。
待機児数についての厚労省発表(1日)は、子どもを安心できる保育所に預け、働きたいという親の当たり前の願いを実現するのが困難な現実を裏付けるものです。待機児数の増加幅は、昨年の386人を大きく超えました。待機児童がいる市区町村も30以上増加しました。政府が待機児の「定義」を一部変え、育休期間中でも復職の意思がある親の子どもを新たに待機児に含めるなどしたことで増えた面もあります。しかし、根本的には認可保育所をできるだけ利用したいという切実な父母の要求が、幅広く存在していることを示しています。低賃金・不安定雇用の広がりで夫の収入だけでは家計がきびしく、できるなら働きたいという女性も増加しています。
働く女性が増えたので、ニーズが予想を上回り、保育所整備が追い付かないなどという政府の説明は無責任です。「女性活躍」とか「一億総活躍」などといって働くことをさんざん“推奨”してきたのは安倍晋三政権のはずです。それに見合った規模で認可保育所の増設・整備を行ってこなかった安倍政権の姿勢が厳しく問われます。
世論の広がりで安倍政権も「待機児童ゼロ」を掲げざるをえなくなっています。しかし当初の「17年度末」目標を今年初めに放棄、「20年度末」に先のばししました。その目標も達成は極めて難しいと指摘されています。
そもそも安倍政権の「待機児童解消加速化プラン」は、親たちが求める認可園の大増設に踏み出すものではありません。力を入れている「企業主導型」などは、子どもの安全のために決められている保育基準を緩めるものです。「小規模事業」など既存施設の入所年齢や定員を緩和する“詰め込み”にも批判が上がっています。こんな場当たり的対策では、待機児問題の抜本的打開はできません。
欠かせぬ保育士処遇改善
国と自治体は、保育ニーズの広がりを把握し、認可園を軸に、計画的に保育所の大幅な増設をはかるべきです。各地で問題になっている保育士不足を解消するため、抜本的な処遇改善を急いですすめることが不可欠です。
来年春の保育所入所についての説明などが、間もなく自治体で始まります。「保活」に駆け回ることなく、親が希望する保育園に入所できるよう、国・自治体は責任を果たすことが求められます。