2017年9月3日(日)
主張
築地市場移転問題
「豊洲ありき」の強行許されぬ
東京都の小池百合子知事が築地市場(中央区)の豊洲新市場(江東区)への移転を「すみやかに実現する」ための補正予算案を都議会臨時会(8月28日〜今月5日)に提出し、論戦が交わされています。東京ガス工場跡地にある豊洲新市場への移転をめぐっては、深刻な土壌や地下水の汚染について都民、市場業者の不安と懸念が払しょくされていません。移転を加速させることは「食の安全・安心を守る」という都民との約束をほごにするものです。補正予算案は撤回すべきです。
「食の安全・安心」どこへ
小池知事は都議選直前の6月、市場についての基本方針を発表しました。その中で「築地は守る」「築地ブランドを守る」としたことは重要ですが、豊洲移転については重大な問題があり、再検討を求める声が上がっていました。しかし、知事は7月の都議選後、都民、市場業者に約束してきた豊洲の土壌と地下水の汚染を環境基準以下にする「無害化」の方針を撤回。都議会臨時会に豊洲への早期移転をすすめる、約55億円の補正予算案を提出しました。
豊洲新市場への移転について都民の不安は消えていません。「食の安全・安心を確保できるのか」という点では、今年になって地下水から環境基準の100倍をはじめ多くの箇所で汚染物質ベンゼンが検出されました。地下水から汚染物質が発見されたことは、豊洲新市場の土壌や地下水に汚染物質が残っていることをはっきりと示しています。
補正予算に盛り込まれた「追加対策」は主に「地下ピットの追加対策工事」と「地下水管理システムの機能強化」です。地下ピットとは日本共産党都議団が昨年夏に発見して都政を揺るがした盛り土がない「地下空間」です。追加対策でこの床にコンクリートを敷くといいますが、その厚さは15センチで地震に対する強度などが不安視されています。
「地下水管理システム」では地下水をポンプでくみ上げて水位を抑えるといいます。もともと、40ヘクタールもの広大な敷地の地下水の水位をコントロールすることなどできないという批判が強くあります。「地下水管理システムが本格始動して10カ月が過ぎたのに水位の目標を達成できていない」と事実を示して、追加対策で目標達成できるのかと追及した日本共産党の曽根はじめ都議の質問に、小池知事はまともに答えることができませんでした。
「築地ブランド」を支えてきた中小零細業者が多い仲卸業者は、豊洲移転に不安と怒りの声を上げています。「築地女将(おかみ)さん会」は、「豊洲に行ったら帰って来られない。(知事が言う)5年も体力がもたない」と訴えています。「会」が行った移転中止の請願署名数は全仲卸事業所の7割超と圧倒的です。この声に逆らうことは許されません。
現在地再整備の議論こそ
今回の臨時会は都議選後の初の市場移転についての本格的な論議の場です。知事与党が市場移転についての予算特別委員会の設置に反対し、経済・港湾委員会に小池知事の出席を求めないなど都民の声に背を向けるのは大問題です。
知事は豊洲移転を中止し、築地市場を営業しながら再整備する道を市場業者と真剣に協議することが求められます。