2017年9月2日(土)
主張
防衛省概算要求
際限のない危険な軍拡やめよ
防衛省は2018年度軍事費の概算要求で5兆2551億円を盛り込みました。過去最大だった17年度当初予算の軍事費をさらに1300億円も上積みするものです。最大の特徴は、北朝鮮の弾道ミサイル発射に対応する態勢強化のためとして、際限のない軍拡の道に踏み出そうとしていることです。憲法違反の安保法制(戦争法)に基づき、自衛隊の「海外で戦争する軍隊」への改造も一層推進しようとしています。危険極まりない軍拡要求です。
敵基地攻撃能力に道も
18年度の軍事費は、安倍晋三政権が決定した5年間の軍拡計画・「中期防衛力整備計画」(14〜18年度)の最終年度に当たります。安倍政権の下で軍事費は13年度を含め当初予算で5年連続増え続けてきました。年末に決定される18年度当初予算案が17年度の5兆1251億円をさらに上回り、6年連続の増額となるのは必至です。
概算要求で大幅に増えているのは「ミサイル防衛」費です。17年度の649億円に対し1791億円を要求しました。北朝鮮の核・ミサイル開発が「新たな段階の脅威」となっているとし、新規の「ミサイル防衛」システムの「イージス・アショア」導入に着手します。
現在の「ミサイル防衛」システムは、▽イージス艦に搭載した海上配備型迎撃ミサイル(SM3)が大気圏外で弾道ミサイルを迎撃▽撃ち漏らした場合、地上配備型迎撃ミサイル(PAC3)が高度十数キロで迎撃―という2段階となっています。「イージス・アショア」はイージス艦搭載のSM3の陸上配備型です。要求額は年末に決定されますが、1基800億円と試算され、今後、軍事費を一層押し上げることになります。
「ミサイル防衛」の限界は広く指摘されています。「イージス・アショア」を導入しても日本全土をカバーするのは不可能です。しかも、多数のミサイルの同時発射や、おとりや複数の弾頭搭載の場合、迎撃は困難です。このため、自民党などからは、ミサイル発射基地をたたく「敵基地攻撃能力」の保有を求める声が上がっています。
この点で、「島嶼(とうしょ)防衛用」として「高速滑空弾」と「新対艦誘導弾」というミサイルの研究費が盛り込まれたのは重大です。「射程を延ばせば将来的に北朝鮮の策源地(敵基地)攻撃能力になり得る」(政府関係者、「朝日」1日付)ためです。敵基地攻撃に必要な兵器体系には兆単位の費用が必要とされ、文字通り際限のない軍拡に道を開きます。北朝鮮の核・ミサイル開発に対しては、軍事的な対抗ではなく、対話による外交的・平和的な解決こそ必要です。
海外派兵型兵器も次々
「島嶼防衛」などを口実に、F35A戦闘機(6機、881億円)、V22オスプレイ(4機、457億円)など、米国製の海外派兵型兵器の導入も目白押しです。価格高騰のため導入中止も検討された無人偵察機グローバルホーク(144億円)も計上されました。
8月17日の日米外交・軍事担当閣僚会合の共同発表は「中期防衛力整備計画の次期計画期間(19〜23年度)を見据え、同盟における日本の役割を拡大し、防衛能力を強化させる」と一層の軍拡を明記しています。地域の軍事緊張を高め、国民生活を圧迫する軍拡にストップをかけることが必要です。