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2017年8月28日(月)

オスプレイ 事故でも日米演習参加

背景に米軍の新軍事作戦構想

遠征打撃群の力 拡大・強化狙う

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 オーストラリア沖で墜落した米海兵隊普天間基地(沖縄県宜野湾市)所属の垂直離着陸輸送機・MV22オスプレイの同型機を、北海道で実施中の日米共同演習への参加を強行した米海兵隊とこれを容認した日本政府。オスプレイの飛行・訓練参加強行の背景に、米軍の新たな軍事作戦構想の存在が本紙の取材で浮かび上がりました。(山本眞直)


写真

(写真)オスプレイ訓練反対の声を上げる人たち=18日、北海道千歳市

 二つの米軍発表の文章があります。いずれも米第7遠征打撃群(長崎県佐世保市)と第31海兵遠征隊(キャンプ・ハンセン、名護市など)、普天間基地所属のオスプレイ飛行隊などによる米豪軍事演習「タリスマン・セイバー」(6月23日から7月25日)を取り上げています。

 一つは、第7遠征打撃群がタリスマン・セイバーで実戦した新軍事作戦構想を検証したもので、7月27日にウエブサイトに掲載した「火力強化(Up―Gunned)遠征打撃群の前進」という題名の報道文。

 もう一つは、海兵隊機関紙「マリーン・タイムス」が同演習でのオスプレイ部隊などの役割についてのべた論評記事です。

 火力強化遠征打撃群構想は、2016年4月にスコット・スイフト米太平洋艦隊司令官(大将)が提唱したもの。その狙いは強襲揚陸艦中心の遠征打撃群の火力、指揮統制能力を多国籍軍・有志連合軍にまでもつ空母打撃群なみに拡大・強化させることにあります。

米豪演習で実践

 今年のタリスマン・セイバーでこの構想を「実践」しました。「マリーン・タイムス」は普天間基地所属のオスプレイについて「遠征打撃群の前進」で“要的な役割”を果たしたとしています。

 米第7遠征打撃群は、これまで米海軍佐世保基地の強襲揚陸艦「ボノムリシャール」を旗艦とした揚陸艦の「グリーンベイ」「アシュランド」による3隻態勢で編成。これにオスプレイ飛行隊とこれを運用する第31海兵遠征隊を搭乗させ、遠征打撃作戦を実施してきました。

 今回のタリスマン・セイバーでは米海軍第3艦隊(米カルフォルニア州サンディエゴ)から駆逐艦「シュテレット」が加わり、豪州から4隻のフリゲート艦などで増強しました。

 一方、報道文「遠征打撃群の前進」では、「水陸両用戦力を統合して“仮想敵の戦力”に対抗した有志連合軍として初めて実戦的に前進した」と力説しました。

 同文には「オスプレイ」の表記はありませんが、新軍事作戦構想の編成にふれた中で、同演習に普天間基地のオスプレイ部隊「第265中型ティルトローター飛行隊(増強型)」の参加を明記しています。

 「マリーン・タイムス」は、同演習でのオスプレイの役割を、地上強襲のための兵員輸送、艦上や陸上部隊への支援で兵員を迅速、効果的に移せることを証明した、と評価しました。

 同紙は、そのうえで「オスプレイがインド・アジア太平洋地域に前進配備されて5年目にして、米海兵隊がこの地域で作戦の統合部分になることをこの演習で証明した」と絶賛しています。

陸自への“伝授”

 一連の文章がオスプレイの重要性を強調した新軍事作戦構想―。沖縄県民の飛行停止要求、関係自治体の訓練参加反対を無視し、オスプレイの日米共同演習への「参戦」に米軍が固執した動機が見えてきます。

 北海道での「ノーザン・ヴァイパー」は米海兵隊がオスプレイ6機と2000人、陸自が1300人と過去最大の共同演習です。

 海兵隊とオスプレイ飛行隊が、「有志連合軍」=陸自のカウンターパート(対応相手)として「仮想敵の戦力」に対抗、“防衛”する軍事作戦を“伝授”します。

 オーストラリア沖でのオスプレイ墜落事故は、タリスマン・セイバー終了後に同海域で次の作戦行動に向けた最終点検のための「認定演習」(CERTEX)の実施中でした。同演習は、墜落後も強襲揚陸艦から海兵隊員を乗せてオスプレイが着艦訓練を繰り返しました。

 米太平洋軍は「演習は18日に完了した。今までと異なる、挑戦的な能力を完璧に達成させた」(21日の同軍ホームページ)と伝えました。

 北海道での日米共同演習は、オスプレイの夜間飛行作戦をはじめ、歩兵部隊に加えて火力支援をする砲兵部隊を初投入しての実弾射撃(一部)など“挑戦的な総力戦”を演じました。


軍事戦略最優先の発想

 米海兵隊に詳しい日本平和委員会の上原久志調査研究委員の話  米軍はオスプレイ墜落で3人死亡させながら「世界中で飛んでいる」と強弁、2日後には沖縄で飛行を強行、北海道での共同演習に途中からオスプレイ部隊を“参戦”させた。そこにあるのは住民の安全、兵士の命よりも米軍の軍事戦略を最優先させる危険な発想だ。米国を忖度(そんたく)して一夜で「飛行自粛」を投げ捨て、オスプレイを野放しで飛ばさせる安倍政権の姿勢を沖縄県民はじめ世論は許さないだろう。


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