2017年8月28日(月)
主張
介護「滞納の罰則」
低所得者排除の仕組み改めよ
介護保険制度で、保険料を払いきれない低所得の高齢者にたいして行われている「ペナルティー(罰則)」が問題になっています。保険料を2年以上滞納した場合、サービス利用料の本人負担が引き上げられるなどの「罰則」によって、必要な介護が受けられない人が各地で生まれているためです。介護保険料は改定のたびに引き上げを繰り返し、低年金・無年金、低収入の高齢者の負担能力を大きく超えています。低所得の人たちを介護保険の利用から事実上締め出している過酷な仕組みを改めることが必要です。
低年金者も3割負担に
介護保険制度では40歳以上の人に保険料を納める義務を課しています。65歳以上の場合、年金収入が年間18万円を超える人は年金から天引きされています。18万円以下の人は、市区町村にたいして納付書などで支払っています。
深刻なのは保険料が年々高騰を続けていることです。2000年の介護保険制度スタート時は全国平均で月2911円でした。それが現在では5514円と約2倍にもなりました。
支給される年金額は、減額や据え置きばかりなのに、そこから天引きされる保険料がどんどん引き上げられては、暮らしは苦しくなるばかりです。
保険料を滞納すると、未納期間により三つの「罰則」があります。一つは、1年以上滞納するとサービス利用料がいったん全額(10割)負担になることです。あとで自治体に申請し9割払い戻せますが、手元にお金のない人にはきびしいものです。二つ目は、滞納が1年6カ月以上になると、全額負担した上に9割の払い戻しの一部または全部が停止されます。
三つ目は、滞納が2年以上の場合です。利用料は1割から3割に引き上げられます(期間は滞納期間で決まる)。利用料が一定額を超えた場合に払い戻される高額介護サービス費の支給も停止されます。市町村民税非課税世帯でも食費・居住費の負担軽減措置がなくなるため、施設入所などはきわめて困難になってしまいます。
保険料を滞納する圧倒的多数は、保険料が天引き対象でない年金収入が年18万円以下の低年金・低収入の人たちです。苦しい生活のために医療保険料払いを優先して介護保険料までなかなか負担できない人、無年金で支払いを滞らせた人などが、突然体調を崩し介護が必要になって初めて利用料が3割負担になることを知り、泣く泣くサービスをあきらめたり、制限したりするケースが相次いでいます。厚生労働省のまとめでは介護保険の「罰則」を受けた人は毎年約1万3千人にのぼります。経済的に苦しい人たちを追い詰める仕組みは根本から見直すべきです。
保険料の引き下げ不可欠
現在の仕組みでは滞納が2年を超えると、滞納分をさかのぼって支払おうとしても認められず、3割負担にされてしまいます。事情があれば「罰則」対象外にする規定もありますが、適用は厳格で低年金は理由になりません。医療の国民健康保険料(税)では認められている自治体の柔軟な対応も法律上できません。こんな硬直した運用は直ちにやめるべきです。
過酷な「罰則」を科すのでなく、高い保険料引き下げ、低所得者の負担軽減こそ求められます。