2017年8月16日(水)
日米、発射阻止へ圧力
北朝鮮ミサイル 対話言及なし
首脳電話会談
安倍晋三首相は15日、トランプ米大統領と電話で約30分間会談しました。北朝鮮が日本上空を越えて米領グアム島周辺に向け弾道ミサイルを発射する計画を公表したことを受け、発射阻止へ緊密に連携していくことで一致しました。また、国連安全保障理事会で採択された北朝鮮制裁決議を厳格に履行することも確認しました。日米首脳の電話会談は7月31日以来です。
会談後、首相は記者団に「北朝鮮にミサイル発射を強行させないことが最も重要であるとの認識で一致した」と説明。さらに、「あらゆる事態に備え、強固な日米同盟のもと、高度な警戒監視態勢とミサイル防衛態勢をとり、国民の安全を守るために最善を尽くす」と述べました。
会談で両首脳は、「対話のための対話では意味がなく、国際社会が一致して圧力を強めるべき時だ」との認識で一致。北朝鮮との直接対話による平和的解決を模索する国際社会の動きとは逆に、圧力一辺倒の方針を改めて確認しました。
両首脳は、日米韓3カ国が緊密に連携していくことで合意。さらに、「中国、ロシアの役割が重要」との認識を共有し、両国に積極的な制裁への関与を働きかけていくことで一致しました。
両首脳は、日米で防衛態勢と能力向上のための具体的行動を進めることも確認。日米両国は17日にワシントンで開く外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)で具体策を協議する予定です。
日本は米朝に対話求めよ
各国は平和的解決望む
北朝鮮の核・ミサイル開発をめぐる米国と北朝鮮の間の緊張が高まっています。
安倍晋三首相とトランプ米大統領は15日の電話会談で「対話のための対話では意味がない」との認識を示す一方、日米の防衛体制の強化と能力向上のための具体的行動をすすめることで一致しました。直接対話による危機の平和的解決を模索する国際社会の動きに逆行し、日米一体で軍事的圧力をさらに強めることを表明したともとれます。
北朝鮮と米国の過激な発言の応酬が繰り返されるなか、両国に自制を求める声が国際社会から相次いでいます。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は14日、ソウルでの会合で「何があろうと、北朝鮮の核兵器をめぐる問題は、平和裏に解決されなければならない」と述べ、ドイツのメルケル首相は11日、ベルリンでの記者会見で「この紛争に軍事的な解決はない」と強調し、武力行使に反対する考えを示しました。
米国内では連邦議員や元政府高官などから前提条件なしで直接対話に踏み出すようトランプ政権に求める声が上がっています。
北朝鮮の李容浩(リ・ヨンホ)外相が、河野外相と6日にフィリピンのマニラで意見交換した際、対話を打診していたことも明らかになりました。
国際社会にこうした流れが起こるもとで、憲法9条を持つ日本政府こそ緊張をさらに高める軍事的対応の強化ではなく、米朝の直接対話を実現し、核・ミサイル問題を平和的・外交的に解決するための先頭に立つべきです。
両国の軍事的な挑発の応酬がエスカレートすれば、誤算や偶発的な事態によって軍事衝突につながり、甚大な被害が出る恐れがあります。
北朝鮮に国連安保理決議の順守と、これ以上の軍事的挑発をやめるよう求めるとともに、米朝両国に無条件で直接対話に踏み出すよう呼びかけるべきです。
(桑野白馬)