2017年8月16日(水)
主張
4〜6月期GDP
所得と消費の対策欠かせない
2017年度が始まった最初の3カ月(四半期)である17年4〜6月期の国内総生産(GDP)が発表になりました。個人消費や設備投資などを合計したGDPの伸び率は物価上昇を差し引いた実質で前期比1・0%増、伸びが1年間続くと換算した年率では4・0%増で、四半期ごとで見て6四半期連続のプラス成長となりました。しかし、GDPの約6割を占める個人消費は実質0・9%増と全体の伸びを下回り、生活実感に近い名目では0・8%増にとどまっています。国民の暮らしの立て直しが進まず、消費の低迷が続いているのは明らかです。
消費主導にはまだ程遠い
GDPの伸びを主な項目ごとにみると、実質で個人消費(民間最終消費支出)は0・9%増、民間の住宅投資は1・5%増、設備投資は2・4%増、公共投資は5・1%増、輸出はこれまでの増加から一転して0・5%の減少となっています(輸入は1・4%増)。日本経済はこれまで輸出に依存した“外需頼み”が特徴でしたが、4〜6月期はGDPの伸び1%のうち、内需が1・3%増、外需がマイナス0・3%となっています。
これは安倍晋三政権が16年度に実施した補正予算編成が公共投資や住宅投資などに表れているのに加え、これまで「アベノミクス」(安倍政権の経済政策)で大もうけを上げた大企業が「人減らし」のための設備投資に回しているためです。本来経済成長の中心になるべき個人消費は増加したとはいっても一時的な「買い替え」が中心で伸び悩みの状態です。茂木敏充経済再生相も「消費はまだ力強さに欠ける」と認めるほどです。
経済はかつて“消費が投資を呼ぶ”と言われたように、消費が増えてこそ生産も投資も増えます。どんなに生産しても売れなければ、経済は成長できず、破綻してしまいます。政権に復帰して4年8カ月たつ安倍政権は、低金利や財政などで大企業のもうけを増やせば、雇用や消費も増えると宣伝してきました。ところが大企業の利益は記録的に増えても生産や消費の拡大に結び付かないのは、もうけがため込みに回って、雇用や所得を拡大していないからです。「アベノミクス」が「『アベコべ』のミクス」と呼ばれるのは当然です。
安倍首相は雇用は増え始めているといいますが、増えているのは賃金の安い「非正規」の労働者が中心です。労働者全体の所得は減少し、厚生労働省の「毎月勤労統計調査」も直近6月の現金給与総額は前年同月比0・4%のマイナスです。所得を拡大し、消費を伸ばす対策が求められます。
白書も「低下傾向」を警告
見過ごせないのは、所得が伸び悩むだけでなく、安倍政権のもとでの税金や社会保険料の引き上げが、国民が消費に回す「可処分所得」を窮屈にしていることです。安倍政権がまとめた「経済財政白書」でさえ、「平均消費性向(注=消費に回す割合)は2014年以降低下傾向にある」と指摘しています。「白書」はその原因をあれこれあげますが、最も働き盛りの「40〜50歳代の現役世代については(社会保障の)負担が増えている点は否めない」と認めています。
大企業のもうけを国民の所得に回させるとともに消費税など税金や社会保険料の負担軽減が、消費拡大にいよいよ必要不可欠です。