2017年8月12日(土)
南京市民殺害記述の教科書を選定
私立中学に「圧力」 「反日教育」など攻撃はがき次々
私立灘中学(兵庫県東灘区)が、日本軍「慰安婦」問題や南京占領時の市民への暴行・殺害についての記述がある「学び舎(しゃ)」の歴史教科書を選定したことに対し、外部から攻撃や「圧力」があったと告発する同校の和田孫博校長が同人誌に寄稿した文書が話題です。
(仁田桃)
|
寄稿文の題名は「謂(いわ)れのない圧力の中で―ある教科書の選定について―」。同人誌は2016年9月、ネットに公開されました。17年8月になり、短文投稿サイト「ツイッター」を中心に拡散され始めました。
「学び舎」の歴史教科書は、他社にはない日本軍「慰安婦」問題の記述があります。慰安婦にされた女性たちへのおわびと反省を表明した「河野談話」と、強制連行を直接示す資料は発見されていないという政府見解が併記されています。
自民議員から電話
和田校長は寄稿文のなかで、「自民党の一県会議員から『なぜあの教科書を採択したのか』と詰問された」「本校出身の自民党衆院議員から電話がかかり『政府筋からの問い合わせなのだが』と断った上で同様の質問を投げかけてきた」と述べています。
地元紙「神戸新聞」は、「インターネット上でも『政治圧力ではないか』と問題視する声が上がっている」と報道しました。
16年2月ごろから、同校に「反日教育」「OBとして失望した」など、文面が共通する内容の批判のはがきが約200通届いたといいます。和田校長によると、この共通はがきは南京陥落後の難民区の市民が日本軍を歓迎し、医療や食料を受けている写真が使用されていました。「プロデュース」として個人名を記していました。
はがきの出どころをインターネットで調べてみるとブログがありました。灘中学のほかに「学び舎」の歴史教科書を採用した中学校を列挙し、「南京歴史戦ポストカードで対抗しましょう」と呼びかけていました。
列挙された一つ、麻布中学は本紙の取材に「昨年の一時期はかなりの数のはがきがきましたが、今は全くない」と話しました。
灘中学の和田校長は本紙の取材に「政治的圧力というより、得体の知れないところからはがきがきたというところに圧力を感じた。有名学校が相次いで『学び舎』を採用したので、阻止しようとしたのではないか」と話しました。
「学び舎」を採用した理由については「読み物風になっており、近現代より古い時代のことも、農村で生きる一般の人びとの生活を取り上げている」と説明しています。