2017年8月2日(水)
主張
18年度の社会保障
「削減ありき」から決別こそ
安倍晋三政権が2018年度政府予算案づくりで社会保障費の「削減」を早々と打ち出しています。7月末に各省庁の予算要求の際のルールとなる概算要求基準を閣議了解し、そこでは社会保障費の伸びを1300億円削減する大枠を決めました。18年度は医療、介護、障害者福祉などの各分野での報酬やサービスの改定が同時に行われる大きな節目の年度です。国民の暮らしを支えるには医療・介護などの分野で財源をしっかり確保して制度を拡充させることが必要なのに、まず「社会保障費削減ありき」で予算編成をする政府の姿勢は国民の願いに反します。
医療・介護で「同時改定」
8月から高齢者の医療で患者の新たな負担増が始まりました。患者の医療費窓口負担の上限を設けた「高額療養費制度」で、一定の所得の70歳以上の月額上限が引き上げられたのです。介護保険でも、利用料の自己負担限度額が上がる世帯が生まれます。
毎年のように繰り返される患者・利用者の負担増によって多くの国民はその費用を日々の生活からどのように捻出するかと頭を抱え、四苦八苦しています。安倍政権が社会保障費の伸びを年間1000億円以上削減する政治が引き起こした、きびしい実態です。
安倍政権は18年度もその「削減」路線を続行・推進する方針を概算要求基準(7月20日)で露骨に示しています。社会保障費について8月末の概算要求段階では「自然増分」6300億円の増加しか認めないとしました。さらに年末の政府予算案までに1300億円カットし5000億円まで抑え込む方針を打ち出しました。「自然増分」は高齢化の進展や医療技術の進歩によって増加する費用であり、本来は削減が困難なものです。それを機械的に無理に削ることは、制度に深刻な矛盾とひずみしかもたらしません。
かつて自民・公明政権の「自然増削減」に国民の批判が集中し、一定の見直しに追い込まれたものの、12年に政権復帰した安倍首相の下で「削減」路線が本格化し、医療や介護の負担増、介護「軽度者」の保険からの締め出し、生活保護費の大幅な削減、年金削減などが容赦なく行われました。
18年度は、医療の診療報酬と介護報酬の改定が同時に行われる6年に1度の年です。報酬の改定は、患者と利用者に必要な医療と介護が十分行き届くかの量と質を決める重要な機会です。さらに国民健康保険の「都道府県」単位の運営も始まり、障害者福祉の報酬改定も実施されます。生活保護費の「見直し」議論も進められています。
社会保障をめぐる大事な改定がいくつもある年に、「削減ありき」という枠をあらかじめ設定することは、あまりに乱暴です。
財務省は報酬改定などが重なる18年度を社会保障費のいっそうの削減に向けた転機にしようと圧力を強めています。暮らしの実態を無視したやり方は到底許されません。
拡充への転換が不可欠
社会保障費をカットし続ける一方、軍事費を5兆円以上と過去最大規模に膨張させるなど安倍政権の経済財政運営は根本から間違っています。税の集め方・使い方を改めるなど、国民の暮らしの安心を支える社会保障を拡充させる政治への転換が不可欠です。