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2017年7月29日(土)

主張

陸自日報隠蔽問題

稲田氏辞任で幕引き許されぬ

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 陸上自衛隊が南スーダンPKO(国連平和維持活動)派兵部隊の日報を廃棄したとしながら実際は保管していた問題をめぐり、稲田朋美防衛相が「監督責任」を理由に辞任しました。同時に防衛監察本部が公表した特別防衛監察の結果は、陸自が日報を保管していた事実を非公表とする判断に稲田氏が関与していた疑惑を認定しませんでした。しかし、防衛監察本部も、稲田氏に陸自の日報保管が報告された可能性があることを認めています。稲田氏の疑惑は濃厚であり、辞任で幕引きを図るとすれば、それこそ重大な“隠蔽(いんぺい)工作”に他なりません。

防衛相の関与疑惑は濃厚

 日報は、昨年7月に南スーダンの首都ジュバで政府軍と反政府勢力との間で発生した武力紛争を「戦闘」と明記し、「停戦合意」など自衛隊派兵の前提である「PKO参加5原則」が崩壊していることを示していました。

 防衛監察本部が監察結果をまとめた報告書では、▽昨年7月に陸自派兵部隊と上級機関の陸自中央即応集団司令部がやりとりした全ての文書(電子データを含む)の提出を求めた情報公開請求に対し、陸自は日報が存在しているにもかかわらず意図的に開示しなかった▽昨年10月の情報公開請求に対しても、陸自に日報は存在していたのに既に破棄したとして開示しなかった―などの新たな事実が明らかになりました。陸自が虚偽の説明までして日報を隠蔽しようとしたことは、極めて深刻な問題です。

 防衛省の事務方トップである黒江哲郎事務次官が陸自の日報保管について今年2月15日に陸自トップの岡部俊哉陸上幕僚長から報告を受け、翌16日に非公表とする方針を決めたことなども新たに分かりました。日報隠蔽問題の根深さを示しています。

 防衛監察本部の報告書で看過できないのは、稲田氏が2月13日に陸自ナンバー2の湯浅悟郎陸幕副長らから陸自の日報保管の報告を受け、15日には黒江事務次官や岡部陸幕長らとの会議で非公表の方針を了承した疑惑を認めていないことです。

 防衛監察本部は防衛相直轄の組織で、今回の特別防衛監察も稲田氏の特命で実施されました。報告書が指摘している通り、監察の対象は、事務次官、防衛省内部部局、陸海空自衛隊を運用する統合幕僚監部、陸上幕僚監部、陸自中央即応集団であり、稲田氏は含まれていません。稲田氏の疑惑に関して監察の正当性、信ぴょう性が問われています。

 報告書が、2月13日、15日の防衛省・自衛隊幹部とのやりとりで「陸自における日報データの存在について何らかの発言があった可能性は否定できない」と指摘せざるを得なかったことは重要です。稲田氏が陸自の日報保管の報告を受け、非公表の方針を了承したという証言は複数あるとされます。疑惑はむしろ深まっています。

首相の責任は極めて重大

 安倍晋三首相は、自衛隊の最高指揮官でありながら、陸自の日報保管の疑惑が持ち上がってから今まで一度も防衛省・自衛隊から報告を求めず、稲田氏をかばい続けてきました。首相自身の責任も極めて重大です。

 徹底した真相究明のため、首相と稲田氏は国会で説明責任を果たすべきです。


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