2017年7月27日(木)
主張
原子力利用・考え方
世論に逆らう閣議決定許せぬ
内閣府の原子力委員会が「原子力利用に関する基本的考え方」を決定(20日)し、安倍晋三内閣が、「考え方」を「尊重する」と閣議決定(21日)しました。この夏から開始される「エネルギー基本計画」改定作業などに反映されるとみられます。「考え方」は、「原子力発電所の再稼働及び安定的な利用に取り組むことが必要」とするもので、再稼働反対、原発ゼロの日本を求める国民世論に真っ向から逆らうものです。
再稼働と安定利用を主張
「考え方」は、東京電力福島第1原発事故を機に廃止された原子力政策大綱に代わり、国の原子力政策の長期的方向性を示す「羅針盤」として策定されました。原発を取り巻く環境変化、それを踏まえた原子力利用の基本目標と重点的取り組みが記されています。
福島原発事故は、福島県民をはじめ多くの国民に多大な被害を及ぼし、いまなお多くの人が被害に苦しんでいます。国民多数が、原発再稼働に反対し、原発ゼロの日本を求めるのは、この現実があるからです。原子力利用について論じるなら、事故の現実と国民世論に向き合うことが必要です。
ところが「考え方」は、世論に背を向け原発推進を大前提としています。
環境変化の筆頭に、福島原発事故で「原子力への不信や不安が著しく高ま」ったことをあげますが、「安全な利用実績の積み重ねを通じて国民の不信や不安を軽減する」ことが重要だと強調します。
原発の稼働停止により原発依存度が低下し、「火力発電の焚(た)き増しに伴う化石燃料の輸入増加により、多額の国富が海外に流出」している、電力自由化で「原子力事業の予見可能性が低下している」などの現状も指摘されます。しかし、地球温暖化問題で「原子力発電に一定の役割が期待されている」と強調し、「徹底したリスク管理を行った上での適切な原子力利用は必要」だと断定しています。
福島原発事故が暮らしと環境に及ぼした深刻な被害を考えれば、このような「考え方」を受け入れることはできません。
また「考え方」は、福島原発事故への反省に関わって、「同調圧力、現状維持志向が強い」「情報が適切に共有されない」などの「日本的組織や国民性の特徴が原子力の安全確保」に影響を及ぼしたとして、ここに「本質的な課題」があると主張します。
日本の原発業界・行政と一部の学者などは、「安全神話」にどっぷりと漬かり、市民や学者・技術者の批判に耳を傾けようとしませんでした。率直に問題を指摘する者には圧力をかけ組織的な排除もしてきました。自らの責任を棚に上げ、「原子力ムラ」のあしき体質を日本的組織や国民性にすりかえることは許されません。「考え方」は撤回すべきです。
原発固執の政治にノー
いま福島では、避難指示を解除したからと賠償と支援の打ち切りが進められています。被害者の暮らしと生業(なりわい)の再建がなお困難な状況にあることを無視したものです。
「復興加速」の看板のもとで福島原発事故の被害者を切り捨て、原発に固執して再稼働をすすめる安倍政権の非道を放置することはできません。国民の各分野でのたたかいと結び、安倍政権を退陣に追い込みましょう。