2017年7月25日(火)
主張
閉会中審査と首相
国民の不信の解消には程遠い
東京都議選での自民党の歴史的な大惨敗、マスメディアの世論調査での内閣支持率の相次ぐ大幅下落、日本共産党など野党からの臨時国会開催要求…安倍晋三政権への国民の怒りが広がる中で、衆参両院の予算委員会で国会閉会中の審査が行われています。首相の親友が理事長を務める「加計学園」の獣医学部開設問題や、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派兵された陸上自衛隊の日報隠しなどで、安倍首相や関係閣僚の答弁は説明責任を果たすどころか、「不正はなかった」「記憶がない」などと無責任極まるものです。国民の不信解消とは程遠い姿です。
「加計」問題で疑惑は深い
都議選に先立つ通常国会の最中から大きな問題になってきた「加計」疑惑は、文部科学省が作成した文書に、開設は「官邸の最高レベルが言っている」「総理のご意向」などと内閣府側に言われたと明記されていたことが示すように、首相や官邸の関与で行政がゆがめられたことが疑われている重大問題です。安倍首相は閉会中審査でも、「加計学園」の理事長について「彼が地位や立場を利用して、何かを成し遂げようとしたことは一度もない」と居直り、「加計学園」が獣医学部の開設を計画していたことさえ、今年1月まで知らなかったと言い張る無責任なものです。
首相官邸や内閣府から獣医学部開設の圧力を受けてきたと証言してきた前川喜平前文科事務次官は、同氏が「キーパーソン」と指摘する首相側近の和泉洋人首相補佐官から昨年9月、「総理は自分の口からは言えないから、私が代わって言う」と言われたなどと発言しました。閉会中審査でも前後の経過を明らかにしました。ところがそれに対して和泉氏は、「記録がない」「記憶がない」と根拠も示さず全面否定です。前川氏が詳しく説明しているのに「記憶がない」で済まそうという姿勢は通りません。前川氏は国会の証人喚問に応じることも明らかにしており、和泉氏らの証人喚問も実現すべきです。
「総理は平成30年(2018年)4月開学とおしりを切っていた」と語ったとされる文科省内の文書が残っていた萩生田光一官房副長官らも、首相の発言についても自らの発言についても全面否定です。国会に証人として喚問し、疑惑を解明することが重要です。
「加計」疑惑をめぐっては、国家戦略特区担当の山本幸三地方創生相が、事業者が「加計」に絞られることが正式に明らかになる2カ月も前に、獣医学部の開設に反対していた日本獣医師会を訪ね、「加計学園」の名前を挙げて、開設の方針を伝えていたことも最近明らかになりました。山本氏は獣医師会側の「思い込み」などと発言を否定していますが、“初めに「加計」ありき”で進められていた疑惑はいよいよ明らかです。
臨時国会で徹底審議こそ
南スーダンPKOの日報を陸上自衛隊が隠蔽(いんぺい)し、稲田朋美防衛相も了承していた疑惑についても、安倍首相は「特別防衛監察」中であることを理由に、稲田防衛相の責任を問おうとさえしません。
国民の間では「加計」疑惑などで政治がゆがめられてきたという批判が7、8割に上ります。閉会中審査でも証人喚問などで疑惑を徹底解明するとともに、野党が憲法にもとづいて要求する臨時国会の開催がいよいよ不可欠です。