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2017年7月21日(金)

「文化芸術基本法」の意義と課題 畑野君枝衆院議員に聞く

「表現の自由」を新たに明記

予算拡充の契機にしていく必要

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 先の通常国会で議員提案による「文化芸術振興基本法の一部改正案」が全会一致で成立しました。同法の意義と今後の課題を畑野君枝衆議院議員・党国会議員団文部科学部会長に聞きました。


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 ――今回の法改正の意義はどこにありますか。

 「文化芸術振興基本法」は、2001年に芸術や文化の振興を支援する目的で議員立法で制定されたものです。

 今回の改正で大事な点は「表現の自由」を明記したことです。前文の「我が国の文化芸術の振興を図るためには」の文言の次に「文化芸術の礎たる表現の自由を深く認識し」と加えられました。これは、法制定当時から、わが党が強く主張してきた点です。

 日本共産党は当時、同法の基本理念に文化的権利や専門家の地位の向上などが盛り込まれたことを評価しつつ、芸術・文化にとって最も大事な「表現の自由」が法文に明記されていない点を指摘し、この点をただしたうえで法案に賛成した経過があります。

ユネスコ勧告や憲法21条踏まえ

 今回、わが党が、超党派の文化芸術振興議員連盟の協議で改めて、憲法21条やユネスコの勧告を踏まえて「表現の自由」を明記することを主張し、改正案に取り入れられました。

 最近、各地の美術館や図書館、公民館で、創作物の発表を不当な理由で拒否するなど「表現の自由」への侵害が相次ぎ、創作活動の萎縮も懸念されています。こうしたなかで、法に「表現の自由」が明記されたことは重要な意義があると思います。

 ――その他、評価できる面はどこですか。

 「文化芸術に関する教育の重要性」にかんがみ、学校、文化芸術団体、家庭・地域の連携が盛り込まれたことが注目されています。また、芸術の制作等に係る物品の保存や知識・技能の継承への支援、文化芸術の振興に必要な調査研究といった施策も新たに明記されるなど、芸術団体の要望や意見が反映されました。

 ――共産党は共同提案に加わっていませんが、なぜですか。

観光優先の懸念 これからも注視

 法案には評価できる点もありますが、いくつか吟味すべき点がありました。今回の改正は、法律名を「文化芸術振興基本法」から「文化芸術基本法」に変え、従来の「振興」という立場から、文化芸術全般に関する基本法としています。「文化芸術の振興にとどまらず、観光、まちづくり、国際交流などの関連分野における施策を法の範囲に取り込む」ことや、「文化芸術における様々な価値を文化芸術の継承、発展及び創造に活用する」ことに力点がおかれました。

 文化芸術と観光やまちづくりなどとの連携はありうることです。しかし、そうしたことに直接関わらない分野が軽視されたり、観光の名で文化財の保存があいまいにされたりすることなどはあってはなりません。委員会質疑では、山本幸三地方創生相の「一番のがんは学芸員」「観光マインドが足りない」などの暴言を批判して質問しました。法案の提案者は「そういうことではなく、より幅広にやっていこうということだ」と答弁しました。この点は引き続き注視していく必要があります。

 ――政府が「文化芸術推進基本計画」を定め、地方自治体にも「地方文化芸術推進基本計画」を策定する努力義務を課していますがこの点はいかがですか。

自主性・創造性 地方尊重と答弁

 文化芸術を創造し享受することは「国民の文化的権利」です。「計画」に「成果主義」が持ち込まれたり、画一化されたりすることがあってはなりません。この点も質問し、提案者は「国の計画通りではなく、芸術活動を行う者の自主性・創造性、地方の実情を尊重する」と答弁しました。国民の権利の視点でチェックすることが必要です。

 ――日本の文化予算は、ヨーロッパ諸国と比べて少なすぎると言われます。

 今年度の文化庁予算は1043億円で、国の予算全体の0・1%にすぎません。文化予算拡充は芸術団体・芸術家の方々も強く要望しており、2012年には国会請願が全会一致で採択されています。今回の法改正を文化予算拡充の契機にしていく必要があります。

 衆院文科委員会での私の質問にたいして、提案者は「文化予算の充実・拡充に党派を超えて一緒に政府に働きかけていきたい」と答弁しました。参院では吉良よし子議員の質問に、松野博一文科相が「本法案の趣旨を十分に踏まえ、文化芸術の振興のための予算の充実に努力したい」と答えました。

 文化予算の拡充を求める世論と運動を国会内外で盛り上げていくことが、これからの課題です。


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