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2017年7月21日(金)

主張

住宅の石綿被害

国は実態の把握と対策を急げ

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 公営住宅で使われていた石綿(アスベスト)によって居住者が健康被害にあったケースが明らかになり、不安を広げています。6月にこの問題を公表した患者団体の調査では、32都道府県の県営・市営、UR団地など少なくとも2万2千戸で石綿が使用されており、最大23万人が石綿にさらされた(ばくろ)おそれがあると推計されます。患者団体には問い合わせが相次いでいます。国民の不安に応えるため国は実態をさらに調べ、情報を開示し、補償救済などの対策を急ぐべきです。

関連疾患の長い潜伏期間

 石綿は耐火性、耐熱性、防音性がある鉱物繊維で建材や工業製品として重宝されましたが、ごく細小の繊維が中皮腫や肺がん、石綿肺(じん肺)などを引き起こし、欧州では1980年代から禁止に動きました。日本はむしろ石綿建材を推奨し、2004年の原則禁止まで累積使用量が米国に次ぐ大消費国で、その8割以上が建材として使われたといわれています。建設労働者や石綿をあつかった工場労働者、その周辺住民、学校関係者などで被害が繰り返し大きな問題になり、国やメーカーの責任を問う訴訟も起きています。

 患者団体の「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」が今回、公表したのは、石綿が使われた住宅に住み、被害にあった神奈川県の女性(53)の事例です。女性は2015年に急に激しいせきに襲われ、石綿特有の胸膜中皮腫と診断されました。原因は1歳から22歳まで住んだ県営住宅の天井の吹き付け石綿です。

 国は吹き付け石綿を1975年に禁止したものの、それ以前に使用された建築物への対策は放置しました。自治体に公営住宅への石綿対策を通知したのは禁止から13年後の1988年、その後、自治体が調査や封じ込めに取り掛かるようになりました。立ち遅れは明白です。

 国土交通省は患者団体の発表を受け、自治体に団地名の公表や相談窓口を設けるよう通知しました。省庁などが所管する雇用促進住宅や公務員宿舎を含め、国は全ての公営住宅の使用実態を具体的に調べ、結果を公表すべきです。

 石綿関連疾患の特徴は、ばくろから発症までの潜伏期間が非常に長いことです。「封じ込め措置をした」で済ませず、居住歴があるなど、ばくろした可能性のある人への健康診断や専門病院への紹介などが必要です。

 民間の建物の対策も不十分です。国交省は5月、1989年以前に建てた千平方メートル以下の小規模建築物のうち最大8万2千棟で石綿が使用され、最大3万棟で飛散防止対策が済んでいない、との推計を明らかにしました。これらの建物の解体のピークはこれからであり、震災による倒壊なども想定されます。飛散防止対策が急がれます。

包括的な対策の検討を

 石綿被害は建築現場、工場、その周辺、学校、住宅と対象が広範囲にまたがるため、省庁バラバラの対応でなく一元的な対策が重要です。石綿健康被害救済制度の拡充も求められます。患者団体は、国やメーカーの責任を明確にし、被害者を平等にすきまなく補償救済し、治療や汚染防止、根絶のための包括的な仕組みを求めています。国は真剣に検討すべきです。


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