2017年7月11日(火)
きょうの潮流
福島原発事故から6年4カ月。昨日、新しく就任した東京電力の会長や社長が原子力規制委員会と意見交換しました▼「福島への責任をどう思うのか」と尋ねられた際の会長の発言に耳を疑いました。「原子力なしでは、この後やっていけないことを東電が示していくことが大事」と、原発の再稼働が使命だと言わんばかりだったからです。出身が原発メーカーだからか、原発利益共同体を代弁したものです▼今も約6万人が県内外で避難を強いられています。事故は収束しておらず、原因究明も終わっていません。そのことを強く意識したのが東京地裁で始まった、東電の元会長ら旧経営陣3人の刑事責任を問う裁判です▼検察官役の指定弁護士の冒頭陳述にこうあります。「私たちは、地震や津波がいつ、どこで、どれくらいの大きさで起こるのかを、事前に正確に予知することは適(かな)いません。だから、しかたなかったのか」「被告人らが、注意義務を尽くしていれば、事故は回避できたのではないか」と▼東電は事故の3年前、政府機関が公表した地震活動の評価をもとに津波を計算し、原発の敷地をはるかに超える15・7メートルの高さをはじき出していました。しかも、津波の遡上(そじょう)を防ぐ防潮堤の設置予想図も作っていたのです▼しかし、方針は途中で変更されて津波対策は先送り。指定弁護士は「費用と労力を惜しまず、義務と責任を適切に果たしていれば事故は起きなかった」と主張します。今も再稼働に前のめりの、新経営陣の資格が問われます。