2017年7月11日(火)
主張
「共謀罪」法の施行
違憲の法律は廃止こそが必要
6月の通常国会で安倍晋三政権が数の力で強行成立させた「共謀罪」法はきょう施行です。「心の中」を処罰対象にする憲法違反の法案に国民の批判と不信が高まる中、国会ルールをねじ曲げた乱暴極まるやり方で議論を封じて強行した安倍政権の暴挙に対し国民の怒りはますます広がり、東京都議選で首都の有権者は自民党の歴史的大惨敗という厳しい審判を下しました。国民多数が「共謀罪」法に納得しておらず、受け入れていないことは明白です。それにもかかわらず法律施行に踏み切った安倍政権の民意無視の姿勢は重大です。
恣意的運用の危険は明白
「共謀罪」法は、日本の刑法の大原則と相いれない法律です。これまでの刑法体系では、犯罪の具体的行為があって初めて処罰されることが基本でした。ところが「共謀罪」法は277もの犯罪を対象に、実際に事件が起きていない段階でも2人以上で「計画」し、うち1人が「実行準備行為」をしたと捜査機関が判断すれば全員処罰できるという仕組みです。
「計画」を犯罪として立証するには、「内心」を捜査せざるを得ません。電話やメール、LINEなどの会話を傍受する盗聴の拡大にもつながります。「共謀罪」法は、憲法が保障する思想・良心の自由、表現の自由、通信の秘密を侵害する紛れもない違憲立法です。
政府は「一般の人は対象外」「組織的犯罪集団に限った」などと繰り返しました。しかし国会審議では、環境保護団体も「隠れみの」とみなされれば取り締まられ、「組織的犯罪集団」の構成員でない「周辺者」も対象になることが判明しました。警察の恣意(しい)的判断で「一般の人」が監視され逮捕・処罰される危険はあまりに明白です。
法務省は6月末、「共謀罪」法施行を前に全国の検察に対して、「留意事項」を通達しました。しかし、どんな行為が犯罪とみなされるのか具体的に示しておらず、乱用の恐れは払しょくされません。
警察は、これまで普通の市民を長期間尾行して個人情報を収集したり、労働組合事務所前にビデオカメラを設置したりする違法・不法な監視活動を行ってきました。それが大問題になると政府は「通常業務」と開き直るばかりで全く無反省です。「共謀罪」法によって捜査権限を拡大した警察の暴走を絶対に許さないため、国民側がチェックと監視を強めることがますます必要となっています。
「テロ対策」とか「国際組織犯罪防止条約(TOC条約)」締結のためという口実は成り立ちません。むしろ国連の特別報告者からはプライバシー侵害の危険が指摘されたのに、それにも一切答えようとせず法律を施行する安倍政権の態度は国際的にも通用しません。
「戦争する国」を許さず
安倍政権は、特定秘密保護法(2013年)、安保法制=戦争法(15年)と違憲立法を次々強行し、「戦争する国」づくりを加速させてきました。違憲の「共謀罪」法は、その動きの一環です。
「共謀罪」法施行の目前、全国各地で安倍政権打倒を掲げた集会やデモなどが行われました。憲法9条改憲に執念を燃やし、「国政を私物化」する安倍政権の暴走を許さないたたかいと結び、秘密保護法も戦争法も「共謀罪」法もすべて廃止に追い込む世論と運動を広げることが求められます。