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2017年7月9日(日)

主張

九州北部豪雨被害

人命優先に、さらなる備えを

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 九州北部を襲った記録的な豪雨は、福岡県の朝倉市や東峰村、大分県日田市を中心に多くの犠牲者を出し、深刻な被害を広げています。大量の土砂や流木が押し寄せた地域や集落は道路が寸断され、住民が孤立しました。住民の救助や安否不明者の捜索は、停滞する梅雨前線による断続的な雨の影響などで中断を繰り返しています。避難所に身を寄せている人たちは不安を募らせ、心身とも疲労の色を濃くしています。国や関係機関は、人命優先で救助・救援に総力をあげるとともに、雨への警戒をいっそう強め、被害拡大を防ぐ備えが緊急に求められます。

経験のない雨が短時間に

 家屋に突き刺さるように流れ込んだ太い木、住宅や農地など地域を埋め尽くした泥―。被災地の光景は豪雨の猛威をまざまざと示しています。道路の陥没や土砂崩れによる寸断によって山間部の集落は各地で孤立し、住民救助も難航しています。5日の豪雨から時間がたっても全体像がなかなか把握できないこと自体、被害規模のすさまじさを物語っています。

 一刻を争って人命救助にあたるとともに、災害の長期化も想定される下、避難先での暑さ対策など実情に見合う万全の支援体制を強め、救われた命が避難の中で失われることがないよう関係機関は力を尽くすことが求められます。

 朝倉市はほぼ1日で平年7月1カ月分の雨量の1・5倍の記録的豪雨でした。積乱雲が連なる「線状降水帯」が一帯の上空にとどまったことが要因です。この降水帯の発生を予測するのは非常に困難で、今回も台風3号の通過とからんで複雑な動きだったとされています。最大級の警報である「大雨特別警報」が出されたタイミング、住民への避難の呼びかけの時期や方法はどうだったのかなどの検証が重要となってきます。

 線状降水帯は、2012年の九州北部豪雨、14年の広島市での土砂災害、鬼怒川が氾濫し茨城県常総市の3分の1を水没させた15年の関東・東北豪雨も引き起こすなど最近の水害・土砂災害の大きな特徴です。16年は北海道に台風が3度上陸する異例の動きとなり、岩手県で高齢者施設が豪雨による濁流に襲われるなど犠牲を出しました。経験のない豪雨が近年増加しているのは、地球温暖化との関係がいわれています。

 異なる様相を強める災害には、過去の経験や発想にとらわれず、住民の安全をいかに守るかという視点で避難・防災の仕組みを抜本的に見直すことが不可欠です。

 今回の九州北部豪雨では、地すべりで発生した大量の流木が橋に引っかかり河川を氾濫させたことが、被害を深刻にしたという指摘があります。人の手が入らない森林が目立っていたといわれており、山の管理状況などの調査と点検が必要です。山間部が多い日本全体にかかわる一つの問題として教訓化すべき課題です。

全国どこでも起こりうる

 九州の梅雨前線は活発で、被害を広げない対策をとるために国や自治体は全力を注ぐべきです。

 局地的豪雨や台風シーズンはこれから本格化します。過去に経験のない豪雨は、日本のどこでも起こりうるものです。さまざまな事態を想定した住民の避難体制の確立など自然災害から人命を守るため政治が果たす役割は重要です。


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