2017年7月4日(火)
「一強」崩壊が始まった
安倍政治への対抗軸を
野党と市民の共闘急ぐとき
「最終日の秋葉原は印象が悪かった。あれがとどめになった」
東京都議選の応援に入った自民党関係者の一人はつぶやきます。
安倍晋三首相が都議選で、最初で最後の街頭演説となった千代田区のJR秋葉原駅前。首相がマイクを握る前から、押し寄せた市民が「安倍やめろ」「国会開け」などとコール。演説場所は騒然となりました。登壇した安倍首相は、市民を指さし「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と声を荒らげ、激しい批判の応酬になりました。
選挙戦最後の異様な打ち上げの光景は、国会での多数を背景に「1強」と言われる政権の基盤が、大きく揺らぐ情勢の激変を象徴しました。
現有57議席から23議席に後退する歴史的大惨敗となった自民党。「40議席割れの可能性はあったが、23議席は全くの想定外。何が起こったのかわからない」(同党関係者)と衝撃を隠しません。
「1強」政治の急速な崩壊の始まり。国政への影響も必至です。
自民党関係者は「国会運営や政権運営で批判を受けた。自民党も『国政選挙並み』と位置付けた。影響は大きい」とし、東京の国会議員を中心に政権批判の声が上がると述べます。今後各級選挙で不振となれば、「党内政局」の可能性もあります。さらに「自公関係にも影響は出る。公明は国政では自民、東京では都民ファーストと組むが、成り立たない論理だ」という声も漏れます。
安倍首相は開票から一夜明けた3日、「大変厳しい都民の審判が下された。わが党に対する、自民党に対する、厳しい叱咤(しった)と深刻に受け止め深く反省しなければならない」と述べました。しかしその反省の中身は不明です。
いま安倍政治への批判の質が変化し、国政の私物化、強権政治という安倍首相の体質、資質そのものへの批判が強まっています。
秘密保護法や戦争法、「共謀罪」法など、国民の多数意見を無視した政治は、初めから説明と合意形成を度外視するもの。反国民的政策の中身と強権体質は本質的に一体です。
その先に9条改憲を打ち出している安倍政権。自民党議員の一人は「政局が不安定になれば憲法改正どころではなくなる」と危惧感を示しました。一方、首相の盟友である甘利明元経済産業相は3日、記者団に「今掲げている憲法改正の志が間違っているとは思いません」と述べ、推進の意思を明確にしました。
自民党の壊滅的後退、都民ファーストの会の伸長の中で、日本共産党が議席の前進を果たしたことは、安倍政治への対抗軸が野党と市民の共闘を通じて広がり、共有されていることを示します。自民党関係者は「『共産党は埋没』とメディアは書いたが、強い存在感を示した」と述べます。
安倍政権の崩壊が現実の形で進行し始めたいま、野党と市民の共闘をスピード感をもって広げ、明確な対抗軸を持った政治の受け皿として、その姿を国民の前に示すことが緊急の課題となっています。(中祖寅一)