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2017年6月30日(金)

主張

東電元役員初公判

原発事故起こした責任に迫れ

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 2011年の東京電力福島第1原発事故をめぐり、津波への対策を怠ったとして業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電元会長ら3人の初公判がきょう東京地裁であります。福島原発事故では、民事裁判はすでに多く起こされ、一部は原告住民が勝訴していますが、経営陣の刑事責任を問う裁判は初めてです。原発を巨大津波が襲う可能性は指摘されていたのに、誰がどう判断して対策を先延ばしにしたのか―。全容解明と合わせて、「安全神話」にどっぷりつかった東電トップの責任の所在を明確にすることが必要です。

安全対策よりコスト優先

 東日本大震災によって福島第1原発は大地震と高さ13メートルの大津波に襲われ、建屋は損壊し非常用電源設備などが水没しました。原子炉の冷却機能は失われ、核燃料が溶け落ちる炉心溶融(メルトダウン)の事態に至り、大量の放射性物質を拡散させました。6年以上たっても事故は収束せず、県民に避難生活を強いるなど甚大な被害はいまも続いています。

 きょうからの裁判では、勝俣恒久元会長ら3人について、津波襲来や電源喪失を予測できたのに漫然と原発を動かし対策を怠ったことで事故を発生させ、周辺の病院から避難した患者を死亡させたなどとして業務上過失致死傷罪を問うものです。検察は元会長らを不起訴処分にしましたが、市民参加の検察審査会は起訴すべきだと2度にわたり議決し、昨年2月、強制起訴されました。事故の真相解明と責任の明確化を求める国民の世論を背景にしたものです。

 事故前、東電は津波と地震の危険性を認識していました。政府の地震調査研究推進本部は02年、福島県沖にも大津波をともなう地震が発生する可能性を公表、これに基き東電は福島原発に最大15・7メートルの津波が押し寄せるとの試算もしていました。内部の勉強会では、津波が襲えば全電源が失われることもつかんでいました。

 東電は一時、防潮堤建設などに動きますが、08年に一転、先送りさせ、取り返しのつかない過酷事故を引き起こしました。数百億円以上を要する安全対策や原子炉運転停止のリスクを前に元役員が「安全対策よりもコストを優先する判断を行っていた感が否めない」と検察審査会は指摘しています。

 東電や国に賠償を命じた今年3月の前橋地裁判決(民事裁判)でも、国の地震予測を根拠に東電や国は津波を予見することは可能であり、東電が対策を講じていれば事故は起きなかったと結論づけています。刑事責任を東電に果たさせることは欠かせません。

 裁判では、これまで明らかになっていない多くの内部資料を公開することをはじめ、津波対策などを怠った東電の「安全神話」体質やトップの責任を厳しくただしていくことが求められます。

深刻な事故と向き合え

 福島原発事故の収束の見通しもないまま、東電は“収益改善”を掲げ、福島第1原発と同型の柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働に執着しています。経営を優先に、住民の安全を置き去りにする姿勢は変わっていません。隠蔽(いんぺい)体質も厳しく批判されています。多くの人が苦しみ続ける深刻な事故を起こした責任と向き合おうとしない東電に原発再稼働を語る資格がないことは明らかです。


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