2017年6月28日(水)
きょうの潮流
たいしたものです。160人しかいないプロ棋士の世界で、一つ勝つのも大変なのに「29」も勝ち星を連ねるとは。しかも14歳の中学生が前人未到の偉業を成し遂げたのですから、驚くばかりです▼藤井聡太四段が30年ぶりに公式戦の連勝記録を塗り替えました。昨年10月のプロ入り以来、無敗のままで。中学生とは思えない落ち着き、読みの深さ、タフな精神力…。周りは賛辞を惜しみませんが、本人はいたって謙虚で自然体です▼記録達成直後も「まだまだ実力をつけることが必要だと考えている」「次も教わる気持ちで全力でぶつかりたい」とコメント。快進撃の最中も「たまたま」「運が良かった」と、まったくおごりを感じさせませんでした▼5歳の夏に出会った将棋。すぐに夢中になりました。子どもの頃は負けると、将棋盤にしがみついて泣いたというほどの負けず嫌い。目の前の一局に力の限りを注ぐ集中力や闘争心があの勝負強さを生んでいるのでしょう▼「強くならないと見えない景色があると思うので、そこに立てるようにがんばりたい」(『将棋世界』7月号)。彼が専門誌のインタビューに語った言葉からは飽くなき向上心とともにプロとしての自覚がうかがえます▼それぞれの主張をぶつけ合う将棋は、無言のキャッチボールを大切にしているといいます。自分の中にある弱さを認め、学び合い、高め合う。心を育てる道を一途(いちず)に走り、人間の新たな可能性を切り開いた若者がどんな景色を見せてくれるのか。楽しみです。